これももう使うことはないだろうと思うのだけれど、ペンタックスの一眼レフを捨てられないでいる。6年前に夫婦でパリとロンドンに旅行をすることになったが、当時持っていたカメラの調子が悪かったこともあり、思い切って購入した。今から思えばデジタルカメラへの曲がり角だったが、昔から欲しくて手の届かなかったものの一つだっただけに、嬉しかった。荷物にはなるが持参した。ところが結構操作が難しくて、ある拍子でシャッターが下りなくなってしまった。パリの宿から国際電話でペンタックス社に電話して事情を話すと、親身になって丁寧に対応して頂いた。横で妻が鬼のような形相で「ああああ、電話代があ〜」と発狂しそうな様子だったのがやけに印象に残っているが、カメラも恐がったのか、その後はなんとかちゃんと動いてくれた。

なんで捨ててしまったのかと悔やむものもある。つまらないといわれること請け合いであるが、妻と付き合っていた頃に喫茶店に行くたびにそこのマッチを集めていた。写真などよりも、それなりに当時の思い出がよみがえってくるものと思って結婚する前から集めて引き出しにしまっておいた。結婚後あるとき思い出して探してみたが、出てこない。妻に聞いてみると「捨てたよ」であった。A型人間とO型人間の違いが出ているようである。
どうすべきか悩むのが手帳かもしれない。会社員時代はまともに手帳を使ったことがないが、●●●を始めてから使い始めた手帳が十数冊たまった。そこにはその間の出来事が書かれている。たいていはどんな仕事をしたかが書かれているのだが、たまに当時の記憶を呼び戻してくれる出来事も書かれている。ときとして他人にはあまり知られたくないことも書かれていたりする。そう考えると手帳にしてもデジタル化してしまい、一瞬で消去できるようにしておくのも必要なことかもしれないと思う。
手帳といえば妻もつけている。一度つけているのを横から見たが、これは恐ろしいの一言に尽きる。結婚以来の日々に起こったことのすべてを一日もかかさずに克明に記録している。たとえば**年**月**日、夫がどういう一日を過ごしたかはたちどころに白日の下にさらされるはずである。
捨てるべきかどうかではない。捨てさせるなどできない話である。また私の部分を改ざんすることも不可能である。とすれば凶器としての使用がされないように祈るばかりである。何だかどこかの国の核兵器に似ている。加えて最近はブログでの攻撃も活発化している。とすればヒタスラオトナシク、オトナシク、ソレガワタシノイキルミチ。
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