まけおしみ
ホーム 上へ うつくしさとは…

 

平成16年分の個人の高額納税者(所得税額1000万円超)が全国の税務署で公示され、投資顧問会社の運用部長を務める方がサラリーマンとして初めて1位となったそうである。納めた所得税額は約37億円。所得税の最高税率は37%、規定どおりの計算で逆算すると105億円ほどの収入になるという。また住民税が13%かかるため、合わせて約50億円を納税することになるらしい。それでも55億円ぐらいは手元に残る勘定である。なんともすごい。

その投資顧問会社には大企業から運用を任された資金が2600億円あり、その資金運用益の成功報酬なのだそうである。2600億円。一部の大企業だけでこれだけの余裕資金を抱えている。考えてみるとこれもすごい話である。

サンテグジュペリの「星の王子様」には沢山の星を所有する実業屋が登場する。実業屋は所有する星の勘定に忙しい。そこへやって来た王子さまと実業屋が交わす次のような会話がある。「でも、星を持ってて、いったい、なんの役にたつの?」、「金持ちになるのに役立つよ」、「金持ちになると、なんの役に立つの?」、「だれかが、ほかにも星を見つけだしたら、そいつが買えるじゃないか」千里山噴水、5月頃

個人がその所得をどう使おうがまったくの自由であろうが、企業の場合そうはいかない。そもそもその営業活動自体が社会にとって真に有用なものであるべきだろうし、結果として残った利益は最終的には社会に還元するのが企業の責務である。好決算が新聞紙上を賑わせている。利益をあげるのは結構であるが、その利益をどうするか、最終的に社会の役に立ってはじめて、真の「実業屋」と言えるだろう。企業の「人格」が問われている。

若い頃聞いた、かまやつひろしさんのLPに「喫茶店で聞いた会話」という曲があった。友人と駄弁りながら喫茶店で女友達のヨーコを待っているときの無駄話がその内容であるが、その一節にこうあった。「そりゃそうと3億円(3億円強奪事件の犯人のことをさす)、あいつは捕まらないな。今ここに3億円あったらどうするお前。銀行なんか入れるのかい。島ひとつ買い込んで俺ならヨーコと暮らす」。

3億円もないし、ヨーコもいない、おまけに才能もないからか、おかげで私の生活は平穏無事である。

夫からの手紙目次へ