月並
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 初秋。秋は月がきれいだという。千里山の凡人は何かというとお酒に引っ掛けたくなる。かといって月見ができる濡れ縁などのないわが家では月見酒という風流は不可能である。しからば月光の射しこむ事務所に酒を持ち込み、一人あれこれと物思いにふける一人酒など風流の極みではないかと思い、こうして静かに飲んでいる。

月といえば国内の大手旅行会社はこの秋にも「月旅行」の販売を開始するという。ロシアの宇宙船ソユーズを使って月の裏側を飛行して帰ってくるらしい。旅行期間は8〜9日間、旅行費用は約110億円だというから驚く。顧問先が社員旅行に選択した場合損金にできるのかとか消費税はどうなるのかとか、ちらっと考えたが、今のところそんな顧問先はない。それにしても何故ロシアの宇宙船なのか?ちらっと思ったがどうでもいい。平安神宮近くの京都図書館

 気候もよくなり、せねばならぬ用事もなければ、旅行でもしようかということになるのか。あるいは元気なうちにいろんなところに行かねばとなるのか。先日夢子ちゃんが連休にどこかへ行こうよと、いつものように全部お任せ夫にお任せツアー(拒否権付)の企画依頼を私に出すので、インターネットで色々とさがして見た。名所旧跡を双六のようにまわっては、ここも行ったあそこも見たというのが好きでない私は、旅行社のHPを見ているうちに大抵は疲れてしまう。

 結局疲れ果てた挙句の決定は、冷蔵庫で冷やしたビールをクーラーバッグに入れて、近くのスーパーで398円で買った弁当を持ち、万博記念公園にある国立民族学博物館に行くであった(詳細は夢子さんのブログにあります)。太陽の塔があっちゃを向いているのが見えるベンチでまず弁当を食べたが、値段のわりには結構美味しかった。すぐに民族学博物館に入ったが、これも予想に反して何ともボリューム満点で充実していた。見ても見ても押し寄せてくるという感じがして、二人ともへとへとになりながら出口にたどり着いたような次第である。 

 まあお金が腐るほどある人ならば、月に行くのもいいかもしれないが、月は見るものであり、思うものであり、行くところではないというのが千里山の貧乏人の思いである。また 仕事からの帰りに少し寄り道をして、知った人がいない立飲み屋さんで一杯飲むという何げない行動にもそれなりの旅心はある。つまり日常生活のなかで、「日常」からちょっとの間 、離れてみるのが「旅」という気がする。 それは君の日常そのものではないかと、極めて正確な指摘がされそうな気もするが…。

 国立民族学博物館の成功に味をしめた千里山の凡人はまたも妙案を思いついた。次なる三連休も安近短、 これで決まりや。「吹田のアサヒビールの工場見学、交通費二人で往復約800円、自転車で行ったらタダや。そのうえビール20分?飲み放題、これでどう や」と提案したら、言うこととやる事にこれだけ開きのある人間も珍しいという顔で夢子ちゃん、呆れ顔で一言。「月並みやな」、「…」

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  追伸:吹田のビール工場行きは却下されました。替わりの内容は来週の更新

      をご覧ください。