かしこい暮らし方
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「大江戸えころじー事情」(石川英輔著、講談社文庫)という本に、次のような記述がある。「なくても困らないものをたくさん作り、それを少しでも多く消費しなくては成り立たないのが経済だとすれば,そんな経済は,どこか根本的なところで間違っている。もし今の経済学がそれを正当化しているのなら、経済学も間違っている」。私は経済学についてはまったくの素人であるが、そのとおりではないかと思う。

 また石川さんは昔の人と“ゆかた”の関係についても興味深い話をしてくれる。昔の人はゆかたの生地を買うと母親が縫い上げる。最初は大きめに作って、子供の成長に合わせて調整して着せる。外で着られなくなる程着古すと、寝巻きにする。寝巻きとしてしばらく使うと今度は赤ん坊のオムツにする。更に使い古すと雑巾にする。やれやれこれで終わりかと思うと、最後にかまどや風呂釜の燃料として使う。そして木綿は自然に帰っていくというのである。玄関脇のりんどう

これほど合理的なことはない。たしかにこのような発想からは個人消費が増えて経済が発展していくということは考えにくい。しかし使い捨てによる産業廃棄物の処分場探しということも不要であろう。昔の人達の「かしこい」暮らし方である。

 先頃某家電メーカーの社長が新三種の神器(デジタメカメラ,DVD,薄型テレビ)に代表されるデジタル家電でまた成長したいと語っていたが、私には「なくても困らないもの」に思えて仕方がない。それよりも近頃の阪急百貨店の日本酒売場の品揃えの貧弱さのほうが私にとっては「困ったこと」である。

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