犬と小さな庭
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 マンションの9階から地上暮らしになったら、犬と小さな庭が欲しいと思っていた。庭のほうは土地の広さの関係で諦めざるをえず、駐車場になってしまった。かわりに玄関先に「ヤマボウシ」という木を一本植えてもらってシンボルツリーとした。仕事に疲れたときに、風に揺れる緑の葉を見ながらボォーとしているとそれで充分と思えてくる。犬のほうは関与先の社長さんがレトリバーの子犬差し上げますよと、ご親切に仰っていただいたのだが、いざとなると飼う決心がつかずにいる。

 向かいの家に飼犬がいて、「R」くん(プライバシーに配慮)という。今年で3歳になるオスのラブラドールレトリバーである。辰年生まれなので「R」と名づけたのだろうと勝手に考えている。彼はいつも玄関脇にいるので、ほぼ毎日顔を見ることになる。

 引っ越してきてから半年が過ぎた。妻が近寄ってもおとなしくしているが、私が近寄りそうになると胡散臭そうな眼で見ては時折「ウーッ」と無愛想な対応をする。同じ辰年なのにそれはないだろうと思う。息子などは夜遅く帰るといまだに「ワンワン」吠えられているようである。それに比べると近所のオバサンが一緒に散歩する柴犬の「Y」ちゃん(プライバシー配慮)、月に一度の訪問で会うあるお客様のところの「D」くんとは良好な関係を築いている。

 庭も広すぎれば手入れが大変、犬も飼えば家族の一員なので責任がある。「とりあえずは、これで満足」…それでいいのかもしれない。

 H15/7 Rくんの肖像権を考慮してイラストとしました

追伸

 何ヶ月か前に、息子が「R」くんの頭を撫でているのを見た。先日恐る恐るやってみた。成功した。今では私が出かけるとき、彼の機嫌がいいときは出てきてシッポを振ってくれる。「世話は全くせず可愛がるだけ。まったく都合のいいオヤジでなあ」とでも思っているのかもしれない。

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