ある冬の日の出来事
ホーム 上へ 足で踏むうどん

 

 1月下旬のある日の夕方、気分転換と運動不足解消を兼ねて妻と自宅近くにある服部緑地公園まで散歩に出かけてみた。自宅からは下り坂であり20分ほどで噴水と花壇のある場所につく。妻は早くも疲れたから少し休憩しているというので、私だけで公園内を歩いていると照明とTVカメラらしき光景が遠くに見える。

 近寄っていくと通せんぼをしながら「シィーッ」というしぐさをしている若い男性がいるので「何かのロケですか」と聞くと、NHK朝ドラ「まんてん」のロケですとのこと。これは妻に連絡しなければとすぐにケータイで場所を教えると、疲れていたはずの妻が飛んできた。げんきんな人である。緑地公園から駅へ続く道

 「TVよりも綺麗ね」とか「いや照明のせいだろう」とか言いながら見ていると、ジョギング中らしい私達より少し年上ぐらいの典型的なミーハーオバチャンが現れた。「キャアキャア!!私あの○×さん大好き!!すごいすごい!!いやあ、うれしいぃ〜!!」そのはしゃぎようはあどけない少女そのものだった。呆気にとられている私達にも同意を求めるような笑顔を向ける。私達も同感の言葉を返さざるを得なかった。でも妻よりも上手のそのオバチャンになんとも言いようのない親近感を抱いてしまった。ケータイとミーハーオバサン…私があまり好感を持っていなかった種類のモノ、ヒトであったが、私の考えを少し変えさせられたある冬の日の出来事だった。

 帰りは上り坂だったが結構元気な二人だった。しかし翌々日から2日ほど妻が「足が痛い」と言っていたのは私の予想通りの出来事だった。 H15/2

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