足で踏むうどん
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 「恐るべきさぬきうどん」(潟zットカプセル)という本があり、「麺通団」と称する愛すべき人達が香川県の美味しいうどん屋さんを紹介している。その前書きのなかに「平成4年の11月、丸亀の西森が店を閉めた。平成5年の1月末日、冒頭の中北が店を閉めた。もちろん新聞に載るはずもない。しかしこの2軒はまぎれもなく、さぬきうどんの原点を守ってきた数少ないうどん屋付製麺所なのである」という部分がある。

 都会では今、讃岐うどんがブームで、しかもセルフ方式が好評なのだそうである。異分野からの参入組も加わり、低価格を武器に全国でのチェーン展開を目指すという。「明るい内装、親しみやすい雰囲気にして成功」とか「紳士服チェーンからの参入組はスーツに次ぐ収益の柱に育てたい」とか…。大資本が街から肉屋さん、魚屋さん、八百屋さん、果物屋さん等々を追い払い、ス―パー、コンビニに変えてしまった。彼らにとってはさぬきうどんも利益追求の道具にすぎない。

 小学生の頃、家業がうどん屋さんの級友の家によく遊びに行った。彼のお父さんはよく仕込んだ生地を足で踏んでいた。そしてお昼になるとそのうどんを食べさせてくれたものである。その級友は某国立大学の工学部に進んだが、卒業後は程なく家業を継いで現在に至っている。そんな私にとってスーパーに並べられている「うどん」など食べられたものではない。それは「うどん」という食品ではあるが、「さぬきうどん」ではない。彼はいまでも足で踏むうどんづくりを続けているのだろうか? H15/1

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