押入の奥からマイコンが出てきた。20年程前に購入したNECのPC8001という製品である。当時はちょっとしたマイコン(当時はパソコンをこう呼んだ)ブームで、私も仕事にプラスになればと大金をはたいて手に入れ、結構一生懸命に勉強して「製品収支」のプログラムを完成させた。動くことは動いたのだが、ひとつ問題があった。データの読み取りに異常なほどの時間がかかるのである。当時はディスクが高額なため、ラジカセ(今では信じられないことである)で代用していた。実務上のデータ数で計算してみると、データの読み取りだけでほぼ8時間ぐらいかかることが判明した。私のプログラミングの方法が稚拙だったことも原因のひとつだろうが、それっきりマイコンの勉強はやめてしまい、そのプログラムの入ったカセットテープもどこかへいってしまった。
現在では骨董品的存在である8001を眺めていると、もうひとつの思いがよぎる。当時マイコンを買うか剣道の防具を買うかで迷ったのである。先日インターネットで見つけた剣道の道場に見学に行った。もしかしたらまだできるのではと少し期待していたのだが、もう無理だとわかった。今となってはあのときが岐路だったようである。先月号で書いた「向かいの家のオジサン」はその後剣道に転向して、昨年ついに六段に昇段したと賀状にあった。段位は別として、今も続けていることに羨ましさを感じる。今年五十歳となり、五十路をどう生きるか、今またその岐路に立ち、迷いながら生きている。
H14/12