自分自身の感覚がおかしいのかもしれないと思い、忘れようとしたことがある。昨秋入居した家の流し台の蛇口のことである。住宅メーカー(プライバシー保護は不要かもしれないが)の説明では「足でペダルを踏んでも、水が出たり止まったりします」ということだったと記憶している。実際に使ってみると確かにペダルを踏むと水は出るし、止まりもする。ところが操作後30分たつと今度はペダルを「踏まないと」水は出ないのである。これは商品説明のときに「ペダルを踏まないと水は出ません」と言うべきであると文句を言ったのであるが、妻が「私はこのままがいい」と言うものだから、それなら勝手にしろと以後沈黙した。
ところが先日「オーイどこ行くの」(山本夏彦著、新潮文庫)を読んでいると、その中の「JISのないのをいいことに」というコラムに次のような文章を見つけて、自分の感覚はおかしくないのかもしれないと少し自信を取り戻した。山本氏曰く「洗面台のレバーハンドルもそうである。いらぬ工夫をしたので押しても引いても水が出ない。思わず床を踏んだら噴出する式だと分かってびしょぬれになった」。メーカーの余計なおせっかいが多くの客に迷惑をかけている。そしてそれを何ら自覚していないと指摘しておられた。
全くそのとおりだと思う。住宅メーカーの営業マン曰く「この方が使っていると必ずいいと感じて頂けるはずです」。まもなく1年になるが一向にそんな気はしないし、見えないペダルを一度で踏めたのは数えるほどしかない…。
H15/11
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