東映時代劇に憧れて
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 我々の世代には懐かしい東映時代劇に憧れて、ある居合道同好会で3年程前まで稽古をしていた。居合道には全日本剣道連盟の制定したいわゆる制定居合12本の技があり、初心者はこれをまず習得すべく稽古に励む。その同好会では「初心者コース」的な指導をして頂き、楽しい稽古が出来た。

 居合道には無外流(池波正太郎の小説「剣客商売」の秋山小兵衛はこの流派)、新陰流など様々な流派があるが、私の所属していた同好会は無双直伝英信流といった。制定居合12本を覚えると、いよいよ英信流の技を教えて頂くのだが、これが結構難しい。正座の部11本、立膝の部9本、奥居合へと進んでいくのだが、ここからは「初心者コース」が無いのである。先生が前でお手本を示してくれて、我々はその通りに真似るわけである。ところが、先生と逆向きでお手本を見ることになり余計に難しい。もっと合理的な稽古の仕方があるのではという疑問が消えなかった。

 中野孝次氏の「道元断章」のなかに「教育とは師が口で教えるものでなく、弟子が師を見て学びとることであった。」という部分があり、なるほどという気がした。自分が身をもって学びとるということが居合においても求められていたのだと、やめた後で気がついた次第である。剣道は現実の相手と対するが、居合道は仮想敵を相手にする。それだけに逆に難しく、奥も深いように思う。先生は何時でも戻ってきなさいと仰るが、先生もお酒が好きなのでためらっている。 H14/9

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