マリンライナーと連絡線
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 生まれ故郷の四国に帰るときは岡山からマリンライナーという快速電車を利用する。乗車後一時間もすると突然瀬戸内海が現れる。360度のパノラマのなかを電車は瀬戸大橋を駆け抜けていく。素晴らしい景色に見とれる間も無く、故郷の街並みが目に飛び込んでくる。あっという間の到着である。最初は感激もし、その便利さに感謝した。しかし何度か利用するうちに考えてしまった。 瀬戸大橋が出来るまでは宇高連絡船という船での「旅」であった。岡山からの電車を宇野駅で連絡船に乗り換える。しばらく待った後、船がゆったりと瀬戸内海に乗り出していく。名も知らない沢山の島々を見ながら、色々なことを思ってみたりする。疲れてくるとデッキに出て立ち食いの讃岐うどんを食べながら風に吹かれる。ふと見ると高松港の灯りが遠くに見えてくる。あー帰って来たんだという思いがじんわりと涌いてくる。そんなゆっくりとした時間の流れかたであった。

 瀬戸大橋の出現は一時間の船旅を7〜8分程度の電車での通過に変えてしまったようである。安全性の向上、経済効果等考えれば有益なことであり、私の個人的な感傷などナンセンスなことと思う。 しかしこの一時間の船旅があったおかげで、気持のほうもゆっくりと故郷に帰り、また都会へ戻っていくことができたのではないかと思う。デッキで食べた讃岐うどんはあまり美味しくなかった記憶があ る。この夏また美味しいうどんを食べに行きたくなってきた。 H14/8

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