点灯夫の生活
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信楽焼きのフクロウ

 サン=テグジュペリの代表作「星の王子さま」で、王子さまが5番目に訪ねた星は、星のうちで一番小さな星でした。その星には街灯があり、その街灯に火をつける点灯夫がいます。点灯夫は朝になると街灯の火を消し、夕方になると火をつけるのが仕事です。ところがその星は一年ごとに早く廻るようになり、いまでは一分間でひとまわりします。だから点灯夫も一分ごとに火をつけたり消したりしなければならなくなってしまいました。

今の地球は点灯夫の星とそっくりになってしまったように思えます。交通機関は高度に発達し、情報がほぼリアルタイムで全世界を駆け巡る。人々は欲望を追いつづけけっして足ることがない。24時間眠らない地球という感じです。私達も好むと好まざるとにかかわらず、立ち止まって考える余裕のない点灯夫の生活を余儀なくされてしまっているのではないでしょうか。

 10月号で書いた野々村氏のいう「生きるということ」において「余分な付加価値」をどんどん身にまとっていかざるをえないのが現代社会なのだとすれば、そんななかで良寛の「棄てる」という姿勢をどれだけもてるかが、自分らしい生き方をしていくうえでの課題なのではないでしょうか。 H13/12

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