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ru’f |
’00/04/14 発売 |
詳細マルチアングルの完成形の1つ |
初めてこの作品に出会った時は結構衝撃でした。 その独特の世界観と、何よりその「魅せ方」。 後に「教室シリーズ」と呼ばれ1本の続編と総集編、 そして2本の番外編が製作された作品です。 この当時のフライングシャインのスタイルにもなっていた「WAM」から始まった、 「各登場人物の視点から見た多視点型ビジュアルノベル」を 完成に導いた記念すべき作品でもあります。 そのシステムを生かしきった複雑なシナリオと相まって、 素晴らしい展開を見せてくれます。 「DoNoR」以降このスタイルの作品は製作されていませんが、 私は大好きだったので「また見たい!」と思っています。 そしてこれは個人的な意見ですが、続編の「傀儡の教室」は好きになれませんでした。 これは「贖罪」があまりに凄かったと言うのもありますが、 「傀儡」はタイムテーブルで今読んでいるシナリオの時間軸が確認出来る様になりましたが、 そのシステムに依存し過ぎたのか、「だから」タイムテーブルを採用したのか 分かりませんが、シナリオの整合性がぐちゃぐちゃになっている為です。 それは全てテーマの「催眠術」の所為なんですけどネ・・・(^^; ・・・と言う事で、この作品は恐ろしいまでの現実感と退廃的な雰囲気。 そして複雑な人間関係が魅力の傑作です。 ・ ・ ・ それではスタッフの皆様を見ていきましょう。 と言っても「いつもの」フライングシャインの方々なんですけどネ(^^; シナリオは毎度お馴染みの「KeN様」 原画は「真木 八尋様」 CGは「保ヶ谷 日吉様」といつものメンバー様(笑 そしてディレクターは「蒼色様」 個人的には原画は「みんめい様」が好きなんですが、(真木様スイマセン! こちらも中々雰囲気が出ていて悪くありません。 そして特徴的な「システム」を説明しておきますと、 まずシステムの各操作ボタンが画面の四辺にカーソルを持っていくと、 「SAVE」「AUTO」等のボタンが現れる仕組みになっています。 初めてプレイした時はマニュアルを読まずに始めて、 「何処でセーブするんダ〜!」と叫んだ記憶があります(^^; 次に特徴的なのが「立ち絵が無い」事です。 イベント絵以外のシーンでは背景のみ。 そしてそれが「実写の写真」を加工して使用しています。 慣れないうちは手抜きに見えましたが、 この作品の独特の雰囲気は「これ」が作用していると思います。 見慣れると結構良いんですヨ、これが。 そして「イベント絵」も特徴的です。 Hシーンはまるで四次元空間に浮かんでいる様な感じで、 背景を描いていないCGです。 ・・・SFマニアにあるまじき表現ですネ(汗 ちなみに「四次元」とは、 一次元(線、点など)、二次元(絵などの平面:紙でも厚みがあるので二次元にはならない) と我々の存在する三次元(縦、横、高さの立体空間)に、 「時間軸」が加わる空間を指します。 身近な例では「宇宙空間」が現在それと定義されています。 つまり「ワープ」や「タイムマシン」はこの定義から生まれています。 「パラレルワールド」も広義ではこれに含まれます。 ・・・って、思いっきり脱線してるヨ!!(笑 個人的にはこの絵はリアリティに欠けるのであまり好きではありません。 ・・・・・ ・・・ ・ と言う所で作品検証に入ります。(←ムリヤリ(^^; まず初期設定からですが、 舞台は現代日本。主人公はメインヒロインの「平松 七瀬」 この作品では「陵辱の渦に巻き込まれる女の子達」がテーマになっていますが、 メインキャストは「陵辱する側」ではなく「される側」の女性です。 その為、一般的な作品とは違った趣になっています。 つまり「行為そのもの」の描写よりも「心理の動き」が基準になっています。 他にも「ヒロイン視点」の作品はありますが、 これ程徹底して男性キャラを脇役にしている作品はなかなかありません。 主人公である学生「七瀬」の父親が殺人事件の容疑者として逮捕された。 当然その事は黙っていた彼女だったが、その事件に気付いた人間がいた。 「おまえの父親、殺人犯だってな」 その言葉は彼女にとって死刑宣告だった。 それは「贖罪」と言う名の「陵辱劇」の始まりだったから・・・。 と言うあらすじの作品です。 (あらすじ短っ!たったの5行かよ・・・) 実はこの作品の魅力はストーリー本体と言うよりは、 キャラ設定にあります。 上記の通りストーリー自体はとてもシンプルですが、 それを形作っていく女性キャラの複雑に絡み合った人間関係がポイントになっています。 それも単に「友達」とか「先輩、後輩」とかではなくて、 「彼女の兄が実は・・・」とか全員が問題の殺人事件に関係しています。 最初は見えて来なかったその辺りの事情が視点を変えてゆくごとに登場して、 次第に全容が明らかになる様に設定されています。 冷静に見ると少し「ご都合主義」と取られかねない部分もありますが、 「次々に現れる驚愕の真実」と言う魅力の前にはほとんど気になりません。 そして次はその緊張感溢れるシナリオを見ていきましょう。 前述した通り、基本的に「1人称シナリオ」で1人のヒロインに絞って シナリオが進行してゆくのですが、要所要所で第三者のモノローグが挿入されて それが「伏線」になって緊張感を盛り上げるスタイルです。 前述の人間関係がキーポイントになっているシナリオは、 このスタイルにとてもマッチしていて素晴らしい!! この引き込まれる様な緊張感は絶品です♪ 謎を残したまま1人目のシナリオを終えると、 次のシナリオで謎解きをする傍らでまた新しい伏線を登場させる。 正に謎が謎を呼ぶシナリオ構成は「1人称」の魅力全開です!! このスタイルに近い名作に「螺旋回廊」がありますが、 伏線の張り方が絶妙だと言うポイントに関しては この作品に軍配が上がると思います。 最後にストーリー展開です。 この作品に限らず「名作」と呼ばれる作品に共通する事ですが、 ストーリー展開をより面白くしているポイントの1つに、 「メインテーマ以外にもう1つストーリーの軸がある」 と言う内容が挙げられると思います。 この作品の場合は「陵辱の連鎖に飲み込まれるヒロイン」をテーマに据えて、 「殺人事件」を軸にストーリーが展開してゆきます。 ストーリーに読者を引き込む手段として「なぜ?」を増やすのは常套手段です。 ただ、その謎に方向性が無ければ散文的な内容になってしまうので、 1つ「軸」を決めていろんな方向から「それ」に向けて伏線を張ってゆく。 最終的にそれらが集約された時にやっと全貌が明らかになる。 「謎解きモノ」の常識ですね。 特にこれでは「エロゲー」と言う特殊性(特化したプレイヤー)を生かして、 「陵辱」と言ういかにもエロゲーらしいテーマを掲げてそちらに意識を集めさせて 「1つの殺人事件の全容解明」と言う軸を自然にプレイヤーに受け入れさせています。 もしそちらをメインテーマにすると「推理モノ」になってしまうのを、 自然とエロゲーにする事でより「軸」を際立たせる狙いだと思われます。 当然これは見事な効果を発揮していて、 普通に「探偵モノ」などを見ているよりも「サスペンス」のレベルがアップしています。 「これぞ”ノベライズ”だ!」と満足することでしょう・・・。 ・・・・・ ・・・ ・ 考えてみれば、この作品でも「初期設定」がキーポイントになっています。 表立って発表していない部分の設定までしっかり練られた作品は、 製作前から既に「良作以上」が約束されているものだと納得出来ます。 ・ ・ ・ 人の欲望は底なしである 特にその対象より優位に立った時 人はそれを抑える事が出来ない それを「けだもの」とさげすむ事はない それ自体は誰もが持つ「本能」だから むしろ対象物が「それ」を受け入れるなら それにこそ驚愕と賞賛を送ろう 何をも恐れぬ狂人か それとも真の「強人」なのか・・・ ・ ・ ・ |