螺旋回廊
ruf

’00/01/14 発売

「エロ」「シナリオ」共に歴史に残る傑作

イキナリな事を書く様ですが、私には「愛する妻」がいます。
(当然リアルで、です)
その為に私は「寝取られ作品」に著しく嫌悪感を抱きます。
最初から「寝取られ」だと分かっている場合は、
買わないぐらいに徹底しています。
「もし、このヒロインが私の妻だったら・・・」
と考えてしまう所為です。
それでも「陵辱好き」(^^;の私はそう言うシナリオに度々出会うのですが、
この作品程には「怒り」「焦燥感」「挫折感」を味わう事はありません。
それ程にこの作品のシナリオは「徹底」して「完成」されています。

この作品は「ruf」の3作目として世に送り出されました。
当時の「Will」は今ほどはブランドが多くない時期だったので、
その力の入れ様は凄い物でした。
製作に「a^ge」を起用する辺りはそれを裏付けています。
当時の同社は「化石の歌」「君がいた季節」等の人気作品を
世に送り出していた所の注目ブランドに成長していました。
そんな環境(最強のスタッフ)で開発された作品がこれです。

当然私が応援するまでもない程の「傑作」として
いろいろな所で紹介されている訳ですが、
私もプレイ当時を思い出して「吐き気をもよおす程の嫌悪感」
と戦いながら、このレビューを書きたいと思います。



・・・とは言いながら、その当時の私は「家族計画」のレビューで触れた通り、
鬼畜街道まっしぐらだった為に今思うほどは嫌悪感を抱いてなかったのですが、
それでもやはり「うつ病」になりそうになりながらプレイしていました(^^;

実はこの作品、冷静に考えると「嫌われる作品」の要素をかなり持っています。
「理路整然としてはいるが冗長なテキスト」
「立ち絵とイベントCGのキャラの違い」
「同じシナリオを何度も見ないとクリア出来ない」
「差分を除くと長さの割に少ないCG」
「興味深い内容だが短絡的なテーマ」
・・・改めて挙げてみると、スゴイですネ・・・。
ホントにこの作品大丈夫なんですか?(笑

この様な剣呑を吹き飛ばして余りあるのが、
「鬼畜人タムー」様のシナリオです。
この作品の魅力の全てはそこにあると言っても過言ではありません。
ただ、その事は後で詳しく書くとして他のポイントも一つだけ・・・。

驚くのが「立ち絵」のバリエーションの豊富さです。
「表情」「ポーズ」などが会話の内容通りに
実に効果的に変わります。
(個人的には更に”服装”も変わると嬉しかったんですが・・・(^^;)
ココから生まれる「臨場感」は素晴らしい物で、
”気付かないうちに”作品の世界に引きずり込まれます。
この手法は「a^ge」のお家芸で、他の作品でも使われています。
ゲームの会話パートは基本的に立ち絵なんですから、
「立ち絵に力を入れる」もしくは「イベントCGを思いっきり用意する」のは
名作としての正しい姿だと思います。
(正確には”そうしたから”名作になった訳ですが・・・(^^;)

それではいよいよシナリオの検証に入ります。
まずは初期設定からですが、
舞台は現代日本。主人公は大学の助教授をしています。
その為にゲームの大半が「大学構内及び周辺」と「自宅」で進行します。
よく考えてみると、この「行動範囲の狭さ」がリアリティがあって、
より一層の感情移入を誘うのかも知れません。
そして登場するヒロイン達は、
「主人公の生徒で容姿端麗、明朗快活な美少女」
「主人公の同僚の講師で、ぶっきらぼうな態度の美女」
「主人公の生徒で控えめな性格の普通の女の子」
の3人が登場します。
・・・何か在り来たりな設定ですネ(^^;
この「在り来たりさ」がこれ程有効に使われた作品は他に例を見ません。
つまり「普通の人が普通に生活している日常の風景」が後で生きてきます。
ココで行われている「リアリティの追求」が作品で最も重要なポイントです。
そしてその日常に忍び寄る「非日常」の影・・・。
「EDEN」と言うホームページが彼らに近づいてきます。
この「インターネットの秘匿性」からくる「不気味さ」が「非日常」を一層演出します。

次にシナリオ構成ですが、
「マルチアングルシステム」と言うシステムを採用しています。
このシナリオは徹底した「一人称」を使って書かれているので、
主人公の視点だけだと「今何が起こったんだ!」と言う感じになるのを
各登場人物の視点から順番に見ていって「事件の全貌」を
明らかにしていくと言う趣旨です。
これは「フライングシャイン」が「教室シリーズ」や「WAM」で使った手法と同じです。
このシステムは「一人称」のシナリオを効果的に補足出来るのですが、
一歩間違うと「同じシナリオを何度も読まなければならない」事になります。
実際メインシナリオではEDを見るたびに今まで無かった選択肢が
出てくるシステムになっているので、この事態に陥りますが、
このシナリオで見ている範囲が狭いので
その他の内容はちゃんと「アナザーシナリオ」になっています。
特に一番最後に現れる「エトセトラシナリオ」は、
それまでの「救いが全く無い徹底した”鬱シナリオ”」とは違って
完全に独立した「幸せな日常」を綴っていて、
(選択肢次第ではもっとスゴイ”鬱”が見れますが・・・(^^;)
ここまで来てやっと肩から力が抜けた気分になれました。

最後にストーリー展開を見ていきましょう。
前述した通りですが、普通の日常を過ごしていた主人公が
ふとしたきっかけで「EDEN」と言うホームページに出会います。
そこでは「強姦」「拉致」「監禁」などが日常的に行われていて、
さらに「それ」を関係者は「遊び」と呼んで面白がってさえいた。
そんな異常なサイトにある日から主人公の生活が掲載される様になった。
困惑する彼の周辺で次々に起こる関係の深い女性の失踪。
そして彼女らの無残な陵辱シーンがホームページに!!
主人公はどんどん奈落の底に追い込まれていく・・・。
と言うストーリーです。

言っておきますが、このストーリーに「救い」は全くありません。
例外無く彼女らは拉致され踏みにじられて壊されます。

この2行の言葉に全てが詰まっています。
よくもこんなストーリーが思いつくものです。
ココは私の個人ページなのではっきり書きますが、
主人公に感情移入してしまった私は、
ライターの「鬼畜人タムー」様に殺意を抱いた程です。
(わ、私は良識ある一般市民ですヨ!(汗)
あぁ・・・レビューを書いてるうちに、また怒りが・・・(ウガァ〜!
と言うぐらいのリアリティが溢れるシナリオは、
冷静にレビュー出来ない程の完成度を誇ります。
これを成功させているのは前述した「徹底した一人称シナリオ」です。
これは「D.U.O.」のレビューでも書きましたが、
「主人公が知らない事はプレイヤーも知らない」
「主人公が見ていない事はプレイヤーも分からない」
と言う必然的な演出が出来るので、
この作品ではそれを最大限に利用して
「主人公が知るのは全て終わった後、HPに公開されてから」
と言うスタイルをとっています。
そこで生きてくるのが「インターネットの秘匿性」です。
主人公には結局最後まで「犯人」が誰なのか分かりません。
つまり怒りを持っていく場所が無いまま焦燥感を抱く事になるのです。
どうぞ皆様主人公と一緒に「彼女らを壊された喪失感」を
思い存分味わって下さい!
何たって半端な「壊し方」じゃないですから・・・。

とココまではどこのレビューHPでも書いている内容ですが、
私の意見はこれで終わりではありません。

実はこのシナリオは一点だけ破綻している箇所があります。
ココからは私のポリシーに反して「ネタバレ」になりますので、
嫌な方は見ないで下さい。

それは「天野 宙」に関する事です。
彼は「EDEN」の構成メンバーの中で唯一の主人公達と関係のある人物です。
この作品の「ツボ」は「相手が見えない恐怖」だと思います。
その前提を元に考えると、彼は「黒幕」の様な存在として「表」に出てはいけない筈ですが
なんと「女好き」の彼は顔も隠さずに堂々と陵辱に参加します。
「何処の誰かも分からない相手」から陵辱を受けているならいざ知らず、
自分の顔見知りがいる状況を作っては、意味がありません。
何故なら、相手の素性が分かってしまっては、
「その人物」に怒りを向ける事が可能だからです。
「怒り」は人間の感情の中でも最も激しい物で、
とても感情で抑えられる物ではありません。
つまりこのヒロイン達は「怒りの矛先」を得てしまっているのです。
その事から見て、最終的に解放されたヒロイン達は主人公に
「犯人グループの中に”あいつ”がいた」と告げる筈です。
いくらシナリオ上で「完全に篭絡されている状況」を書いても説得力に欠けます。
その彼女らが解放されてからも沈黙を守っているのは、
どの様に考えても不可解です。
シナリオの整合性(つまりこのヒロイン達がターゲットになる必然性)の為に
彼の存在が必要なのは分かりますが、
被害者に犯人グループの中に「何者か」が分かる存在を作ってしまっては、
この作品のテーマが瓦解していると言わざるをえません。

・・・と唯一の問題点を指摘した所で、この作品が「名作」である事実は変わりません。
上の部分は私の「レビューアーとしての意地」であって、
作品全体の魅力は変わらずに輝き続けるのですから・・・。




「事の大切さが分かるのは失われてからである」

何時の時代も変わらずに繰り返される後悔

人はいつまで後悔し続けるのだろうか

「大切」なものを「大切だ」と言う為に

何故躊躇し続けるのだろうか

それはエゴに過ぎない

今までの「大切な日常」が失われるのが怖いから

それは「相手」に対して失礼だと気付かないのだろうか

私は声を大にして言おう

「あなたにそばにいてほしい」