家族計画
D.O.

’01/11/02発売

人の繋がり(絆)と向き合った傑作

元々私はこの作品を「ドタバタコメディ」のつもりで購入しました。
OHPでの紹介もそんな感じでしたし、とにかく「設定」がムチャクチャ(^^;

「いろんな問題を抱えた”赤の他人”が集まって
”家族”と言う形態を取って問題解決に当たる相互扶助計画」

なんぼなんでもムリがあるだろう!?

これでコメディだと思わない方が不自然な訳で・・・。

ココで私をよく知る人は疑問を抱くでしょう。
「あの山田一フリークが何を言ってるんだ」と・・・
シナリオの山田一様の「3部作最終作品」として有名なこの作品が、
私の「山田一様」との出会いになったんです。
つまりこの時点では「加奈」や「星空ぷらねっと」は知らなかったんです。
何か運命を感じずにはいられません。
それまでの私は「エロゲーはエロけりゃイイんだよ!」の信念の元
純愛作品なんて糞くらえ(下品でスイマセン(^^;)と、鬼畜街道まっしぐら爆進中・・・
購入基準は「エロCGが気に入るかどうか」の一点のみで、ストーリーなんてそっちのけ。
かの名作「螺旋回廊」ですら「陵辱モノ」と言う理由だけで購入して、
「エロシーン」の回収のみに執念を燃やしていたと言う人物でした。
(↑これホントに私と同一人物か!?)

そんな私の強固な姿勢を「力づくで180度ひん曲げた」のが、この作品です。
それまでのストーリーが素晴らしいどの作品も私を更正出来なかったのに、
何がそんなに「破壊力」があったんでしょう?
その謎を皆様と一緒に考えてみましょう(笑

まず初期設定ですが、問題ありまくりです(^^;
舞台は現代日本の何の変哲も無い一都市で、感情移入しやすいのですが
キャラ設定がムチャクチャです。
「裏路地で行き倒れている不法入国の中国人」
「他人の家にムリヤリ上がりこむ頭のネジが外れた元企業戦士」
「結婚詐欺に遭ったお人よしの自殺志願者」
「中学生(?)にしてダンボールハウスの達人のホームレス」
「他人が作った料理が食えない学生時代の愛人(!)」
あげくの果てが、
「高慢な態度と毒舌だけを武器に世間の荒波を超えて行く
一文なしの元お嬢様」
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
「オレにど〜しろってんだ!!」

そ〜なんです、真面目に受け取れる設定じゃ無いんです。
こんな設定が通用するのはコメディしかありえない・・・。
事実、序盤はコメディとして展開していきますが
これこそが「山田マジック」の思うツボだと後に分かる事になろうとは・・・。
まぁ、この段階ではコメディと言う判断で間違いありません。

次にシナリオですが、初期設定のままです。
前述の設定を前提とした流れで進んでいきます。
これは、私の評価基準の中でもかなりのウェイトを占めていて、
初期設定と言う「大前提」を無視したり覆したりする展開は、
私の評価では「最悪」の部類に入ります。
私のお気に入りの中には、そんなつまらない作品は
有りませんのでご安心下さい。
と言う事で、この作品は「コメディ」な訳ですが
ここがポイントになってきます。
皆様は「コメディ」を見る時に、やれ「ストーリー解釈」だとか
「人物設定」だとか、「世界観」だとか、そんな小難しい事を
考えながら見ていますか?
「そんな奴おらへんやろ」(←大木師匠風に

正にこれが「山田マジック」なんです。
「コメディ」と言う何でもアリの世界を使う事で、
このムチャクチャな設定を見る側に
すんなり受け入れさせてしまうんです。
こちらが出来る事と言えば素直に笑う事だけ。
「おい、おい(笑)」と言う感じで・・・。

そしてストーリー展開の考証に舞台は移って行きます。
序盤からあなたは、いきなり、むりやり(笑
このドタバタコメディの世界に放り込まれます(爆
主人公は普通のフリーターだったのですが、
裏路地で行き倒れの女の子を見つけた所から
人生の歯車が粉砕していきます(爆
(「狂って行く」なんてもんじゃナイ)
そらもう「変なおっさん」が絡んでくるは、
中国人マフィアは攻めてくるは、
あげくに住んでるアパートは崩壊するは
ムチャクチャでごじゃりまするがな(^^;
一気に「宿なし」の境遇に追い込まれた主人公は
「行き倒れ」と「変なおっさん」と運命を共にする事になります。
そして見つけた一軒の「空家」で再起を誓った共同生活、
「相互扶助計画”家族計画”」を発動する訳です(イヤイヤながら
ココで重要なのが、「主人公」の態度が
「訳の分からないコメディ世界に巻き込まれた一般人」
の対応になっている事です。
正に今のあなたと同じ境遇(笑)になっているから、
素直に感情移入出来てしまう訳です。
「やっぱり”突っ込み”が居ての”ボケ”だな♪」
なんて風に・・・(^^;
そしてはちゃめちゃな設定から起こる
はちゃめちゃな「日常生活」は意外と
楽しく暖かいものであって、退屈しない毎日の「擬似体験」が
「コメディ」であるからこそ素直に楽しめます。
日々起きる「小さなトラブル」を笑いとばしながら・・・。

そうこうしている内にストーリーは中盤に入っていきます。
序盤を楽しんだあなたは既に「主人公」そのものでしょう。
「永遠に続くかとも思える平和な日々」
にどっぷりハマってしまっています。
ただ元々「ムチャクチャなキャラ」ばかりですから、
問題も徐々に大きくなってきます。
この辺りも「初期設定」の通りですから、違和感は有りません。
むしろ「こうなって当然」とも思えます。
主人公も「この生活」が気に入ってきたのか、
積極的に問題解決に奔走します。

でも、何か忘れていませんか?
このキャラクター達は「相互扶助計画」に参加しなければ
ならない程の問題を、それぞれ抱えているんです。
一人ではとても解決出来ない程の・・・。
それが「大前提」でしたネ?

この辺りまで来ると、とても主人公一人の頑張りでは
対処しきれない状態にストーリーは突き進んで行きます。
坂道を転げ落ちる様に・・・。

そしてあなたは気付きます。
これがコメディでもなんでも無かった事に。
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
今まで「コメディの設定」だと思っていたものは
実は「本当の問題」として存在していたんです。
「とても一人では解決出来ない程の問題」として・・・。
この現実を突きつけられた主人公は、
その「重さ」にどう対処すれば良いか分からないまま
とにかく前に進むしか道は残されていなくて・・・。

そうです!これが「山田マジック」の正体です!
序盤を楽しませて見る側を引き付けておいて、
ストーリーごと谷底に叩き落す!!(笑
しかし、展開に無理があっては本末転倒なので
自然と「そうなる」様な初期設定にする。
それと悟らせない様にオブラートに包んで・・・。

コレに叩きのめされた私の「鬱レベル」と言ったら・・・(笑
やってくれましたネ山田一様・・・。
完全にノックアウトされた私は、眠る事も忘れて
EDへと突き進む事になります。
主人公と共に・・・

ゲームを進めながら私はいろいろ考えました。
自分が大切に想っているものの正体を。

「平和で幸せな日常」

「それを与えてくれるものの存在」

「それらを守る為の手段」



おっと、「おでかけ」しちゃいましたネ(^^;
そして主人公は「選択」を強いられます。
全員は救えないから、せめて「一番大切な人」をと。
そして「各キャラシナリオ」に入っていきます。
ここからは「怒涛の展開」になっていきますが、
決して「御都合主義」にはならない様に
シナリオに細心の注意が払われています。
まるで「ネタバレした後は言い訳が出来ないからな!」
と言わんばかりの丁寧な仕事には、
更にストーリーに引き込まれるばかりで・・・。(^^;

この辺りから「泣き」の連発で、まともに画面を見てられない。
そのクォリティはどのシナリオでも一切手抜きはなく、
しっかり各ヒロインとのストーリーが楽しめます。
ここでも重要なポイントがありまして、
ヒロインごとの展開はきっちり独立しているのに、
大筋のストーリーは変わらない様な作りになっています。
コレは「両刃の刃」で、下手をすると「どれも同じ展開」になってしまって
各キャラクターがぼやけてしまいがちなのですが、
この作品ではそんな事は一切有りません。
これこそ「マルチエンディングの鏡」だと思っています。

最後のEDではどのシナリオでも主人公とヒロインは笑っています。
(あっ、2人ほど嬉し泣きしてたか・・・(汗)
決して御都合主義の「ハッピーED」ではありません。
自分達が苦悩と苦闘の末に勝ち取ったEDです。
彼らはみんな「絆」と言うかけがえの無いものを、
私達が当たり前と思っている「日常」と共に勝ち取ったのです。
そんなストーリーに祝福を。




全てが偽りに見えても

時間だけは平等に流れている

その流れを巻き戻す事は出来ない

自分の過去は消えはしない

「経験」と言う名の牢獄

それを超えられるものは何か?

自分の「これから」

それを一緒に作ってくれる「誰か」

一人で歩くには人生は過酷すぎるから

だから胸を張って言おう

「”絆”が出来ました」