D.U.O.
〜song for all〜
ぱんだはうす

02/04/26 発売

SFエンターテイメントの傑作

皆様は「ぱんだはうす」と言うブランドをご存知でしょうか?
「なめんなヨ!」と言う方もココが10年以上の老舗だとお気付きでしょうか?
大抵の方は最近出来た「新ブランド」と言うイメージでしょう。
実際「ブランド」として表舞台に名前が登場したのは、
2000年の事ですから間違いではないのですが、
「Melody」や「Cat’s Pro」の名前で93年頃から活動していたんです。
そして満を持して社名の「ぱんだはうす」をブランドとして掲げた、
記念すべき「第2作」として開発されたのが、この作品です。
(実際の発売は1年以上延期した為に「第3作」になった)
このブランドは「気に入ったモノなら何でもアリ」を心情にしていて、
そのバリエーションを広げる意味でとても手間と情熱を掛けた作品です。



この作品のコンセプトは「大人が楽しめるSFエンターテイメント」
最近は「頭でっかちなSF」が氾濫しているから(私は好きですが(^^;)
素直に楽しめる本格エンターテイメント作品を作りたい!!
と言う主旨の元に開発されました。
しかし「SF」(サイエンスフィクション:科学的仮作)と銘打つからには、
「時代背景」や「技術考証」も実に細かく設定されていて
「ハードSF」の資格も十分でありながら、知らなくても楽しめると言う
とても理想的な作品に仕上がっています。

「設定」や「ストーリー」は後で詳しく書くとして、
まずはこの作品の特筆すべき点を挙げていきましょう。
まずはCGからですが、
背景はこの業界では有名な「草薙」が担当しています。
細部まで事細かに書き込むのに、「縁取りなし」で「水彩画」の様な
タッチで描くから決してメインの「立ち絵」を邪魔しないと言う
「いぶし銀」の仕事をこの作品でも見せています。
そしてその背景に引き立つのが「VOSS氏」のキャラです。
「ぱんだ」では今の所今作だけの登場ですが、
正に「アニメ」の様な原画は、その仕上げも手伝って
本当にアニメを見ている様で、独特の個性を醸し出しています。
更にSFだけにメカにも凝っていて、
担当した「森本 靖泰氏」は細部に至るまで
その拘りを如何なく発揮しています。
そしてそれらを更に彩っているのが、
実力派声優の迫真の演技です。
ヒロイン担当の「如月 美琴」と「Ruru」を筆頭に、
「北都 南」「海原 エレナ」「深井 晴花」等の
名立たる名優の演技のお陰で「ドラマティックモード」
(台詞ウィンドゥが消えるモード)
で楽しんだ方が良いぐらいの完成度を誇ります。

そして忘れてはならないのが、
「音楽をテーマに」と謳っているだけに、一切手抜きの無いBGMです。
全体的にピアノを重視した落ち着いたBGMが多く、
作曲担当の社長「PANDA様」がピアニストではないかと
想像させるに十分な内容です。
もちろん出来栄えも「そこいら辺のサントラ」が裸足で逃げ出す程で、
「普通のアルバム」として聞いても何の遜色もありません。
そして、それを楽しむ為に「DISK2」がCD−DAによって
「普通のCD」になっていてステレオ等で聞ける様になっています。
(今も「コレ」を聞きながら書いています(^^)
ボーカル曲は5曲入っていて、どの曲も
劇中で各ヒロインが歌っているスタイルで作品の中に溶け込んでいます。
おまけにこの内の3曲が「作品のテーマ」を担っている
重要な位置付けになっていて、作品に深みを出しています。

それでは「初期設定」から見ていきましょう。
舞台は22世紀を目前にした東京。
この世界は21世紀を目前にした「2000年12月25日」に
「アポトーシスクライシス」と呼ばれる、人類の抵抗力が
限りなくゼロになる現象によって、全人口が1/5になると言う
悲劇から「人類増加」の問題を気にしなくて良くなった事によって
科学的に目覚しい発展をした設定になっています。
これに関しては「製品マニュアル」に2ページに渉って
もっと細かく記載されているので、そちらをぜひご覧下さい。
更にこの世界に引き込んでくれるのが、キャラ設定です。
これも実に細かく設定されていて、それを読むだけでも
想像の翼が羽ばたきまくる程です(^^;
以下に主人公の設定をそのまま転記してみます。

高梁 拓弥(たかはし たくや)
物語の主人公。
26才、日本人(DNA測定による)。身長175cm、体重72kg。
バサッとした黒い髪、端正な顔立ち。そこそこにがっしりした体型で、顔は二枚目。
しかし性格は二枚目半。皆に好かれる性格ではある。
実は拓弥には身元が無く、15年前の12月25日のクリスマス、雪に埋もれて行き倒れ
になっていた所を一朗らに助けられた。その時以前の記憶は一切無かった。
ID登録もされていなかった彼を一朗は家族として迎え、息子同然に育て、現在に至る。
職業はランナー。一朗がやっていた仕事・事務所をそのまま引き継いだ形である。
いろいろと(女性)問題を起こすが、「ランナーとしての能力は抜群」と業界内では有名な人間。
警察局の信頼度も(事件解決については)高い。
2100年においては、稀有な存在とも言える、アナログ派。
隠れた才能として、ピアノがある。一朗が所有していたピアノをさわっているうちに、
身に付いた様子。その実力はプロ顔負けだったりする。
深夜、MEMORIES閉店後、こっそり鍵盤を叩いているらしい。
いつもの通り、公安局からの依頼で動き始めた時、彼の人生も大きく動き始める。
それは世界中をも巻き込んで・・・。
(改行は変えているが、マニュアルをそのまま抜粋)

・・・と、これだけの内容が主要人物全員に設定されています。
その為、とてもココだけで全てを語るのは不可能ですので、
この続きはマニュアルかOHPでご確認下さい。
この内容を把握していた方が、よりこの作品を楽しめます。

次にシナリオですが、
担当は「すぎやま まさる様」。
前述した設定を見事な「SF」に昇華させています。
自然にSF要素を取り入れながらも、
「そこに生活する人は何も今と違いは無い」と言う姿勢で出来ています。
あまり書くと「ネタバレ」になるので、多くは語りませんが
「挑戦」「挫折」「謎解き」「解決した開放感」を
きっちり「起承転結」に当てはめて表現しています。
やはりコレは重要なポイントなので、きっちりおさえています。

最後にストーリー展開ですが、
あらすじは「初期設定」の所で前述しているので割愛します。
主人公を行き倒れから救ってくれた「高梁 一朗」には双子の姉妹がいて、
ランナー(警察から依頼を受けて捜査を行う「公的探偵」の様な仕事)になった今は
二人とも主人公の助手をしてくれている。
その双子「仁美」「愛美」にはもう一つの顔があって、
父「一朗」が経営するバー「MEMORIES」で「歌姫」としても活躍している。
そんな忙しい毎日の中で、1件の「変死事件」の捜査依頼がくる。
嫌な予感を覚えた主人公は、早速捜査を始める・・・。
そして少しずつ明らかになる事件の真相は、彼の身にも変化を及ぼす。
と言う感じのストーリーです。

実は私只今「ウズウズ」しています・・・「ネタバレ」したくて、したくて・・・(^^;
この物語はしっかりした初期設定を、とても魅力的に書くと共に
それに負けない程の「謎」(これもSFならではの内容です)が
ストーリーの根底に流れていて、それが主人公に少しずつ近づいてきます。
この展開が何とも言えず素晴らしく、ズッポリ物語の世界に引き込まれます。
全てがしっかり練られたストーリーは、とても丁寧な作りです。
この展開を成功させているのは徹底した「1人称」の視点にあると思います。
主人公が見ていないモノはプレイヤーも見れない
主人公の知らない事はプレイヤーも知らない
つまり主人公に降りかかる「謎」はあなたにとっても「謎」なのです。
それを知りたくなって、より一層引き込まれていく訳です。
「EVE」が「多人称」の傑作なら、この作品は「1人称」の傑作だと思います。

あ〜もうっ!「ネタバレ」書きたい!書きたい!書きたい!!
この作品の魅力を語り尽くしたい!!

これ以上は暴走を止められそうもありませんので、
この辺りで筆を置きたいと思います(爆




技術とは便利さの知恵である

革新とは知恵の行動である

発展とは行動の成功である

そして破滅とは成功の怠慢である

成功無き破滅はありえない

では破滅無き成功はあるのだろうか

人は必ず死ぬ

後には「想い」を残すのみ

それを「破滅」と呼ぶにはあたらない

「想い」を受け継がれる「幸せ」があれば