君が望む永遠
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’01/08/03 発売

残酷なまでの「現実」と向き合った作品

「家族計画」が引き金になり、私はそれまでの態度を一変させ、
それまで興味がなく回避していた「名作」を買い漁る様になりました。
この作品もそんな中の一つで、「家計ショック」が抜けきらない私を
「満足」させてくれた数少ない物語です。

そもそも「家族計画」が判断基準になっている
私の「感情移入」の条件はかなりシビアで、

・ 現実世界である事 (出来れば現代が望ましい)
・ 超常現象は御法度 (「現実」なんだから当たり前)
・ 「突出」したヒーローはいらない (「〜に優れている」はOK)
・ ストーリー展開に無理がない (自然な流れが重要)
・ 初期設定を「大前提」とする (おいおい、何処行くね〜んはX)
・ 物語のスケールに合った長さ (いわゆる「長編」の傾向あり)
と言う感じになります。

これらの条件はお互いに密接に関係していて、
例えば「朝の来ない夜に抱かれて」などは思いっきり「超常現象」ですが、
それをあらかじめ「初期設定」としているのでOKなのです。
反面、いきなり「超常現象」になる「KANON」などは「地雷」になります。
特にストーリーの根幹に関わってくるとなると、なおさらです。

と言う所でこの作品なのですが、
既にプレイされている方はもう私の言いたい事はお分かりでしょう。
「完璧じゃね〜か!!」
そうなんです、上記の条件を完璧に踏襲した上に、
「起承転結」の重要性をも網羅した「完璧な名作」なのです!
その上、「美麗なCG」や「完璧な演出」、
更に「素晴らしい声優の演技」(「家族計画」の唯一の弱点、後に「絆箱」で解消される)
なども相まって「家族計画」をも凌駕する「殿堂入り作品」になるのは確実!!
・・・のハズでした・・・途中までは・・・(T-T)

事実この作品をプレイ中の私は、入り込みすぎて(自分の事の様に考える)
仕事は手につかないは、無口になるはで、
精神的にヤバイ状態になってたと思います。
それもこれも全ては、引き込まれる様にメインヒロインの「2人」の
シナリオを一気にプレイしたからでしょう。
更に「ストーリーの裏側では・・・」とでも言うべき「茜シナリオ」をプレイして、
「後日談」までプレイしつくした様な感慨にふけっていました。

そこで「ハタッ」と気付いた訳です。
「この作品まだヒロインいたよな・・・」
これがいけなかった・・・(汗
そのまま忘れていれば、「殿堂入り」だったのに・・・。

もうお分かりですね。この作品が「4位」の理由を。
「サブキャラが立っていない」
もっと言うと「ストーリーに何も関係してこない”攻略キャラ”がいる」
・・・分かるんですよ、現実の重さに耐えられなくなった主人公が
逃避をする為のシナリオだって事は・・・。
だからと言って「本筋」から逸脱してイイ訳がナイだろう!!
例えばED前に「そのキャラ」と関係する事での「遙、水月」との決定的な別離でもあれば
納得も出来るんです。「”そのキャラ”だからこその展開」があれば・・・。
結果は散々なもので、どの「サブシナリオ」もテーマが「うやむや」になると言うていたらく。
作品全体を「ぶち壊す」内容になっています。
(これらのシナリオが好きな方スイマセン(^^;)

「誰一人キャラを無駄にしない」「何一つ伏線を無駄にしない」
そんな作品は今の所「EVE」と「家族計画」しか会えていません。
それこそ「家族計画」では「伊佐坂氏」なんて言う「ちょいキャラ」まで
ストーリーに関係してくるのに・・・。
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
と、このままでは「家族計画」のレビューになりますので、
「いらないサブキャラ」の存在はスッパリキッパリ忘れてしまいましょう。(笑
皆さん忘れましたネ?覚えてませんネ?

それでは「初期設定」から見ていきましょう(爆
舞台は現代日本、主要キャラは「高校3年生」
主人公を含む「仲良しグループ」の中から生まれる、信頼、葛藤・・・。
典型的な「青春モノ」の設定ですね(^^;
典型的であるがゆえに、「誰もが」実際に経験した事のある内容になっていて、
「感情移入」には申し分ありません。
冒頭で「お花畑」を見る頃には既に私は主人公でした(早っ!
この現実味のある初期設定が後々まで意味を持ったまま続いていきます。

次にシナリオの検証ですが、
前述の通り、「起承転結」がしっかりした流れでとても素直です。
(ストーリー自体は一癖も二癖もありますが(^^;)
やはり「始まり」と「終わり」のある「物語」と言うものには、
「起承転結」が無ければまとまらないなと思う訳です。
また、この作品は「2部構成」になっていて、全体の流れを見ると
「起」→「承」→「転」(1部終了)重大事件発生(2部開始)「起」→「承」→「転」→「結」
となっていて、見てもらえば分かる通り
「さぁ、これからだ!」と言う所で「重大事件」の所為で結論を
2部の最後まで伸ばさざるを得ないと言う構成になっています。
これを途中で止められる人がいるだろうか?
「お見事!」としか言い様がありません。

そしてストーリー展開ですが、
これまた見事です。
主人公は無軌道ながら「気の合う仲間」と楽しい学生生活を送っていました。
そこに現れる「仲間」の内の一人の親友の女の子。
とても内向的で、主人公とも距離を置こうとする態度に
主人公は苛立ちすら覚えます。
けれど、みんなで何かをする時には必ず参加しようと
現れるから、その真意が掴みかねると言う日々・・・。
そんな時に彼はその子から告白されます。
「ずっと好きでした・・・。」
良い印象を持っていなかった事もあって、彼は悩みます。
そして彼は知る事になるのです。
自分が大切に想っていた「仲間」がそもそも彼女の恋心から生まれた事を。
その真実を知った主人公は急速に彼女に惹かれていきます。
そして何処に出しても恥ずかしくない「バカップル」の誕生と・・・(^^;

「あるあるあるある」(観客の皆様もご一緒に
私も逆の立場でやりましたネ〜。
ちょっと条件が違いますが、「目標」の友達に
「オレ、○○さんが好きやねん」
と吹聴して回って「外堀」から埋めていくと・・・(^^;

・・・脱線しまくりました(汗
と言う事で「何処にでもある」ストーリーは「初期設定」と相まって
とても現実的で、素直にプレイヤーに溶け込んできます。
当然誰もが「紆余曲折」はあっても、このままEDへ・・・。
と思った矢先に「重大事件」が起こって、
恋も、友情も、自分の人生さえ全てが歩みを止めてしまいます。
それこそ主人公にとっては「時間」さえ意味を成さない様に・・・。

・・・いきなり来るから「事故」なんだと分かってはいます・・・
でも正に「これから」と言う所で、まさかそんな事に・・・。

ここから「2部」に突入していく訳ですが、
ココでそれまでの「現実感のある展開」がモノを言います。
そうなんです、既に「ひとごと」とは思えない精神状態になってるんです。

インタビュアー「らぶりーさん、これまでの展開は如何でしょう?」
らぶりー「・・・・・・・・・・・・」
インタビュアー「あ、あの、らぶりーさん?」
らぶりー「・・・やられた・・・」

すげ〜ヨ、「鬼畜人タムー様」・・・。
流石だよ、あんた神だよ・・・。
ど〜しょうもない状況に、素直にど〜しょうもなくなっている
しょ〜もない私がそこにいました(^^;

主人公もとても素直にど〜しょうもなくなっていますが、
いきなり「こんな」状況を突きつけられれば
誰だってそうなって当然です。
しかし残酷にも彼は生きています。
生きていれば「生活」をしていかねばなりません。
「生活」を営むと言う事は「自分以外の人」と関わると言う事で・・・。
せめて一人でいられれば「時間」を止められるのに・・・。
楽しかった「あの頃」のままに・・・。

そんな彼の前には残酷としか言えない「現実」が常に存在していて、
それを「一緒に背負ってあげる」と言ってくれる彼女の親友
つまり「かつて」の大切な仲間・・・。
そして彼はまた歩き始めます。
例えその目が「前」を向いていなかったとしても・・・。

そんな「重い」2部のストーリーはこの段階では
まだ「起承転結」の「起」でしかありません(!!
この直後にまたも彼の身に「事件」が降りかかります。
「事件」によって彼から離れざるを得なかった「彼女」が帰ってくるのです!!
しかし今彼の隣にいるのは「彼女の親友」で・・・。
それでも彼は「彼女が帰ってきた」と言う現実の前に
今度こそは逃げずに立ち向かって行こうとします。
周囲に「どうしようもない軋轢」を生じさせながらも・・・。
しかし周囲はそんな彼を受け入れる訳には行かなくて・・・。
結果的に彼の行動は「その場しのぎ」に終始してしまうと言う
ジレンマに襲われる事になってしまう・・・。
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
ここまでストーリーが展開してしまうと「きれいごと」では終わりません。
いえ、とても終われません。
それまでの「現実感」は更に厚みを増して主人公に襲い掛かります。
「かつての彼女か、今の彼女か」
などと言う単純な問題では有りません。
「奪われ、失われた時間」と言う取り戻せない「現実」との戦いです。
事ここに至っては「周囲」も黙ってはいません。
彼が好むと好まざると関係なく「時間」と共に「現実」は進んで行きます。
誰にもどうにも出来ない「デッドエンド」に向けて・・・。

この作品は「誰かが」主導権を持っている様な「ありふれた」物語ではありません。
「誰にでも立場や意見はある」と言う現実では当たり前の事が
当たり前の様に展開して行きます。
かつてこれ程に「現実ではなかなか起きない状況」に
「現実にあったらどうなるだろう?」と言う「現実感」を
持たせて展開したストーリーがあっただろうか?
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
この作品には「みんな幸せハッピーエンド」などと言う甘ったれたものはありません。
誰かを不幸せにしなければ誰かの幸せはありえないのだから。
当然それ故に「単純」なハッピーEDは何処にも無く、
必ず登場人物全員に「しこり」を残します。
恐らく「現実を去る」その日まで・・・。




「あらゆる物に記憶がある」

そう言った哲学者がいた

それは「街角」に「部屋」に「愛用品」に

もし本当ならそれは残酷だ

幸せな時間には終わりがあるから

それが50年後か明日かは誰にも分からない

だからせめて「大切」にしようと思う

「大切」を「大切」にして

「幸せ」は生まれる

それをまた「大切」にしよう

「現実を去る」その日まで