鼻の奥がカユクなるバツイチへの道


終章 一人の部屋で
 第1話 
抜け殻のように




 「じゃあ、ね。元気でね」

 そう言って本当にK子が出て行ってしまった。

 真っ赤に泣き腫らした目で彼女を見送った。

 ドアの外に出たら抱き止めてしまいそうで

 靴を履けなかった。


 たった一人残された部屋で、置き去られた子どものように

 その日は一日座り込んでいた。

 もう、抜け殻だった。

 愛し始めていたのに。

 愛してくれなかった。

 なんでや?

 夫婦やなかったんか?

 家族やなかったんか?

 俺が悪いんか?

 あいつが悪いんか?


 果てしなく続く自問自答の中、答えを見つけようともがきあがいた。

 答えなんかはありはしないのに。

 答えを見つけたとしても、いまさら取り戻せないことも判っていたのに。


 しばらくしてK子から署名と印のついた緑の紙が送られてきた。

 離婚届だった。

 一番使わないタンス…それはK子の嫁入り道具のタンスだった…の一番奥へしまって、

 ただただ徒らに時間の過ぎるのを待った。



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