鼻の奥がカユクなるバツイチへの道


第12章 君が…見えない…
 第5話 
慟哭




 「え?なんで?なんで?何でそんなこと言うの?」

 「ホンマにわからへんの?」

 解りすぎるほど解っていた。

 K子はもう、僕とは暮らせないのだ。

 彼女の身体が精神が…僕を拒絶している。

 「アタシ、やっぱりあなたのこと、愛せなかった…」

 「…うん」

 「努力はしたよ?でも、あなたは努力した?」

 「…したつもりだった」

 「でも、信じてくれなかった」

 「そうかもしれない」

 「解ってる。悪いのはアタシ。あなたのほう、ぜんぜん向いてなかった」

 「じゃ、じゃあ今からでも…!」

 「もう、アカンねん。とりあえずお願い。解って…」

 不覚にも涙がこぼれ落ちる。

 どんどんどんどん溢れてくる。

 ついには夜中にもかかわらず大声で泣いた。

 子どものように泣いた。

 「うわーん。K子がいなくなってしまうーーー。うわーん」

 文字にすると笑ってしまうのだが、本当にそんな感じの慟哭だった。

 「…アタシ、向こうで寝るね…明日の朝、出て行きます。ごめんなさい。おやすみ…」

 そういう声を自分の泣き声の向こうで聞いた。

 それからまだ何時間も何時間も泣いた。


 明け方になって、文字通り泣き疲れて。

 一人で眠った。

 季節はまた…秋になろうとしていた。



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