鼻の奥がカユクなるバツイチへの道


第12章 君が…見えない…
 第3話 
砂を噛む




 「カッコつけやがって!カッコつけやがって!」

 K子の肉体を思うがままに蹂躙しながら

 気がつくとそんな言葉が半ば叫びとなって口から飛び出していた。

 反面、どこかで自分が泣いている。

 (出逢った頃のように、愛して欲しい、あの頃のように温かく慈しんで欲しい…)

 母を見失った子どものように心の中は泣きじゃくっていた。

 K子は感じているのか苦痛なのか判らない。

 その表情からはどちらとも判断がつきかねた。


 …事が終わった。

 こんなにむなしいセックスは初めてだった。

 文字通り砂を噛んだような気持ちになった。

 「…シャワー…浴びてくるね…もう、先に寝ていて」

 「…ごめん」

 「…謝らんとって。明日からもうちょっと早く帰るよ…浮気はしてへんから。安心して」

 そういうK子の、少し震えた声を背中で聞いて。

 僕も一人布団の中で泣きながら眠った。


 浮気なんかしていないのは最初から判っていた。

 なのに。

 どうしてこうなってしまったんだろう…

 どうしてこんなことしてしまったんだろう…


 そしてそれから、一週間ほどした、ある夜。

 決定的な事が僕の目の前で起きる。

 それは二人で暮らし始めて、わずか一ヶ月半ほどのある夜だった………



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