鼻の奥がカユクなるバツイチへの道
第11章 誓い
第3話 一日千秋
日本に帰ってきて、まだ半年ほどはK子の家族と同居が続いた。
購入予定だったマンションの完成が少し遅れたためでもある。
今思えば、この半年のなかに二人の運命をじわじわと別つ、
決定的だが姿の見えない要因が隠されていたような気がする。
結婚式の余韻も冷め、また少しギスギスした関係の再現。
特に何が、と言い切れないもどかしさ。
申し訳ない申し訳ない、と日々思いながらも
募るイライラ感に我慢をすればするほど
向こうの親や家族と徐々にうまく行かなくなっていく。
お互い気を遣えば遣うほど、言葉は心に届かない。
僕は一人暮らしが長すぎた。
いきなり他人と、しかも少なくはない他人と
一緒に住むことに無理があったのだ。
またその価値観の相違を無理に埋めようとしすぎたのかもしれない。
あるがままに認めていれば…少しは違った結果が待っていたのかもしれない。
今はそう思うことにしている。
些細なことがあまりにも多く、言葉で表現できないのが残念だが
細かい針のムシロの上で暮らす日々で、
彼女に逃げ場を求めていた。
しかし、彼女も本来は向こうの家の人間だ。
一番苦しかったのは…きっとK子自身だっただろう。
いつの間にか新婚旅行のときに二人で見た夢を忘れていくように
またK子と抱き合わなくなっていった。
「二人で暮らし始めれば、何かが変わる。変わるはずだ」
一日千秋の思いで、その日を待ちわびた。
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