鼻の奥がカユクなるバツイチへの道


第11章 誓い
 第2話 
熱帯の夜




 式の翌日。

 二次会でむちゃくちゃに飲まされ、

 二日酔のままで新婚旅行に出かける。

 「結婚したと言う事実」が「幸せである」という

 錯覚を抱かせたままの旅行だった。

 微笑みの国、タイ。


 本当にK子は大はしゃぎだ。

 リゾートのビーチでもバンコクでも。

 彼女も「幸せ」に酔っていたのかもしれない。

 幸せであろう、としただけかもしれない。

 でも、ひさびさに見たK子の屈託のない笑顔。


 正直そんな彼女が可愛くて、この旅行を機会に、

 また以前のように愛していけるかもしれない、と希望が灯った。

 事実、K子の楽しげな表情の中に、僕は幸せを再び見出し始めていた。


 本当に楽しい旅行だった。

 多少のケンカはあったが、

 頼るべき人がお互いしかいない一種の極限状態でもあり、
 
 いわば砂漠の真ン中に二人きりでいるような孤立感は

 互いを信じるしかない、愛するしかない、という信念を植え付ける。

 新婚旅行に海外を選んで間違いではなかった。


 毎夜毎夜、熱く愛し合う日々がわずか一週間とはいえ

 二人の間に戻ってきていた。

 熱帯の熱い夜。

 二人の恋もやっと再び熱く熱く燃え始めていった。



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