鼻の奥がカユクなるバツイチへの道


第9章 旅
第3話 手紙〜佐賀・有田にて




 「二人でおそろいの焼き物を買った町。
 
 アチラコチラ歩いてへとへとになったっけ。

 おかげで僕は少し不機嫌で、

 君も少し不機嫌で。

 ケンカして。

 博多へ帰る電車の席をわざわざ遠く離して。


 このまま放っておこうか、とも思ったけど…

 やっぱりここはさ。

 男が頭下げないと。

 そう思ってまだ少しカッカ来てる頭を

 デッキで少し冷やしてから

 君のいる車両に向かったよ。


 君の車両のドアを開けた瞬間、

 君はパッとこっちを振り返って

 少しはにかんだように微笑んだ。

 その微笑みは今でも覚えているよ。

 そこからは無言だったけど

 二人で手をつないでずっと一緒に居たね。


 この旅行で一番の思い出だった。

 …ケンカでもしないと、僕らは仲良くなれないんだね…」



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