鼻の奥がカユクなるバツイチへの道


第9章 旅
第2話 ベクトル




 それでも一緒に寝ないと。


 なかば義務感のような使命感のような、

 抵抗できない強い力に屈するかのように。

 二人は夜を共にする。


 確かにカラダは感じていたかもしれない。

 しかし、どこかしらシン…と冷たく凍えた芯のようなものがある。

 その部分をお互いがカラダの奥に隠したまま…

 しかしそれは隠しても隠しても

 あからさまに感じあっていたのだろう。

 と同時にそれと同じくらいの力で

 「別れたくない離したくない」

 という意固地さが首をもたげ心を逆方向へ引っ張っていく。

 その力と力は打ち消しあって、永遠にそこから動けないでいる。


 もう、ココからは抜け出せないんだろうな…

 僕の中に芽生えた絶望感はやがて諦めへと変わって

 彼女の中に流れ込んだ。


 どうせ離れられないのなら…

 二人で、行くとこまで行こう。

 そう決めたのはこのときだった。



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