鼻の奥がカユクなるバツイチへの道


第8章 タイミング
第1話 腐れ縁




 別れるなら今しかない。

 それは判りすぎるほど判っていた。

 判ってはいたのだが…

 求め合った後の、 安堵感と虚無感の間に飲み込まれ

 それを言葉にすることはなぜかできなかった


 一度手に入れたものを失いたくはない。ただそれだけだったのかもしれない。

 好きだから、とか、愛してるから、ではなかった。

 半ばプライドにも似た、無意味な感情が自分を支配していくのを感じていた。

 カラダでのみつながっている関係は、 腐れ縁にしかならない。

 …それだって充分に判っていた。


 ただ腐れ縁であってもなお、

 僕はK子との縁を切りたくはなかったのだ。

 ずるずるとタイミングをずらす、むなしい努力。

 それだけに腐心する、不毛な恋へと、歯車は回転し始めた。



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