鼻の奥がカユクなるバツイチへの道


第6章 予感
第6話 Morning Beer




 ………
 どれくらい眠ったのだろう

 目を覚ますと、左側にK子が寝息をたてていた

 それだけでほっとした

 昨夜のすべてが夢ではなかったことがうれしい

 身を起こそうとすると、左腕の感覚がないことに気づく

 K子の腕枕になっているようだ

 起こさないようにそっと額にキスをして、腕を引き抜く


 キッチンへ行き冷蔵庫を開け缶ビールを取り出す

 小窓から見える外はまだ暗かった

 遠く響く新聞配達のバイクの音を聞きながら、ビールを一口すする

 ふいに、裸のままのK子が後ろから抱き付いてきた

 「あ、ごめん…起こしてしもた?」

 「ううん。のどが渇いた。アタシにもちょうだい」

 二人で布団の部屋に戻りカーテンを開け

 明けていく空をながめる…といきたいが

 窓の外は隣家の壁だった

 それでもわずかにのぞける空が白んでいく

 夜明けを待ちながら二人で小さく乾杯する

 二人で迎える初めての朝…

 その朝を二人はビールで迎えた



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