鼻の奥がカユクなるバツイチへの道


第6章 予感
第4話 あいしてる




 カーテンの隙間から洩れ入る月の明かりを受けて、

 水の底の魚のうろこのように

 時折きらめきを見せるK子の肢体…

 闇に包まれた部屋の中で、

 K子の肌だけが雪のように浮き上がって白い

 5月とはいえ少し肌寒い夜更け

 二人は二人の間に生まれたぬくもりでお互いを暖める

 大事に大事に育むように…


 「ねぇ…」

 「なに?」

 高まってくる吐息の下からK子がささやくように問い掛ける

 「アタシのこと…愛してる?」

 え?何を今さら…と思いながら

 「愛してるよ。もちろん」

 …そう言ってしまってから気づいた

 まだK子に、ちゃんと「好きだ」「愛してる」と

 言っていなかった…

 まだ緊張で身を硬くしている

 K子をもう一度強く抱きしめその耳元で

 小さく、でもはっきり力強くもう一度言った

 「あいしてるよ、K子…」

 K子は優しく僕を迎え入れてくれた

 心から…



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