鼻の奥がカユクなるバツイチへの道


第6章 予感
第2話 大河の向こう




 いつの間にか窓の外は真っ暗になっていた

 部屋の中の空気が、夜の闇よりも重く感じる

 会話が長く続かない

 なんとなく目があわせられない

 つきあっていないときでさえ、

 大胆なくらいに身体を寄せてくるK子が、

 今日に限って遠い…



 向かい合わせに座った狭いテーブルの反対側が

 果てしなく広い川の対岸に思えたとき、不意にK子が言った

 「そっちへいっていい?」

 僕が返事をするよりも先にK子は僕の隣にやってきた

 彼女が隣へ座るよりも一瞬間早く、ひざの上に抱き寄せる

 もう言葉は要らなかった

 二人で待っていたのは、この瞬間だった

 判ってはいたのだが、なかなかたどり着けなかったこの瞬間

 長いキスのあと、額をくっつけあって、僕がささやく

 「今日は、泊まっていける?」

 「…うん…そのつもり、で、来たよ」



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