鼻の奥がカユクなるバツイチへの道
第6章 予感
第1話 薄い殻
「おじゃましまーす」
あれから1週間ほどたったある日の夕方
K子が再び僕の部屋を訪れた
両手にいっぱいのスーパーの袋を抱えて
「次は二人でおいしいもの作って夕ご飯しようね」
この前の別れ際にK子とそう約束したのだ
僕も今朝からめったにしない部屋の掃除なぞして
心ウキウキとK子を待ちかねていた
二人で何を作ったのかは覚えていない
そして今日に限ってはそういうことはあまり問題でなかった
だから、なのかそれとも、しかし、なのか
二人で食事をしているときも片付け物をしているときも
楽しげにおしゃべりに興じているときも
食後にコーヒーを飲みながらテレビを見ているときも
いつも外で会うときとは違って、
うっすらとした緊張感の殻に
彼女の体も、僕の体も
覆われているのがわかった
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