鼻の奥がカユクなるバツイチへの道


第5章 キス
第1話 電話




 酔ったK子を無理やり電車に乗せ、

 最寄り駅からタクシーに押込み、

 無事に送り届けた翌日の深夜、アパートの電話がなった

 やはりK子からだった

 「もしもし?」

 「あ、あの…昨夜はごめんね」

 「ああ、大丈夫やったか? かぁなり酔ってたぞ」

 「うん、まだ頭痛い…ところでさ…」

 「なに?」

 電話を持つ手が、少し汗ばんでくる

 K子の次の言葉までの間が、ものすごく長く感じられる

 「あたし、変なこと言うてなかった?」

 力が抜ける…少しホッとすると同時に気が楽になり、舌が回りだす

 「おうおう、思いっきりノロケられた!もう、参った参った(笑)」

 「えーーーーーっ!どんなこと言うたん?ね?ね?」

 「それは言えん」

 「あほーーーーっ」

 そんなこんなで小一時間はしゃべっただろう

 それまでの会話を崩さないよう、さりげなく、かつ、慎重に大胆に…

 「今度の日曜、空いてる?」

 切り出す僕…少し黙ったK子…

 「日曜…うん、空いてる…」

 言葉の微妙な間に気づいてはいたが、気づかない振りをして、

 ぱたぱたと時間や場所を決めて、電話を切る…

 そして、日曜日が、来た



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