鼻の奥がカユクなるバツイチへの道


第4章 初デート
第1話 喫茶店




 K子と初めてのデート、ということになるんだろうか

 スキーからもどり、数日たったころ、約束の日がきた

 オーソドックスに映画

 「デリカテッセン」という近未来の世界を描いたヨーロッパの喜劇映画だ

 単館ロードショーで、マイナー、色調はセピア色というよりも古い皮鞄の色

 およそカップルが見に行くようなシロモノではない

 まあ、それなりに面白かったのだが、

 この映画からは恋愛に関することは何も生まれてはこないだろう


 まだ日も高い時刻に映画は終わり、

 どこへ行くともなく映画館の前にあった喫茶店に入る

 お茶を飲みながらなんやかやと世間話をする

 スキー以来かなり打ち解けてきた僕とK子

 その勢いもあり、きわどい話も割と普通にできるようになっていた

 自然と次第に話はプライベートのほうへと及ぶ

 「彼氏とはうまくいってるん?」

 「う〜ん、可もなく不可もなく、やね」

 「ふ〜ん、スキーのあと、彼氏には逢ってるの?」

 「ううん。逢う機会がないねん」

 「密度的には、僕のほうが濃いわけやね」

 「・・・あんた、何考えてるん? いったい」

 苦笑しながらK子は紅茶をすする

 「いや、別にぃ・・・なにもどうこうしようなんて思ってないよ」

 「ふ〜ん、だったらいいけど」

 「で、相性はいいの?」

 「相性? う〜ん、それこそ、可もなく不可もなく」

 「いやいや、身体のほうは・・・?」オッチャンやな、今思うと

 「ぱしゃ」

 ニヤニヤ笑いながらコップの水をかける振りをするK子

 ふふ・・・なかなかいいリアクション

 日に日にK子の方へ引き込まれていくのを感じていた

 しかしその大きくなっていく心の傾斜を停めようともしない自分を、

 はっきり意識したのはこのときだったかもしれない



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