鼻の奥がカユクなるバツイチへの道


第3章 帰りの車で
第3話 誘い




 「長いことデートもご無沙汰や」

 「アタシでよかったら付き合うよ、暇してるし」

 「え?あ、そう。うれしいなぁ」

 「ぜんぜん本気にしてないでショー! 失敬な!」

 「あははは、だって彼氏おるんやろ?」

 「それはそうやけど、逢われへんから・・・」

 「そう・・・じゃ、映画でも行くか? さっき観たいのがあるって言ってたけど?」

 「うん、マイナーの単館ロードショーやけど」

 「なんていう映画?」

 「『デリカテッセン』知ってる?」

 「う〜ん・・・どっかで予告編だけは見たような気が・・・面白そうだとは思ったけど」

 「よし!決まり!」

 「あ、ああ。かまへんよ」

 「じゃ、今度の土曜日は?」

 「空いてるよ。OK、土曜の、夕方なら」

 「やった、3太郎さんとデートだ!」

 喜んでいる様子が芝居でなさそうで少し嬉しかった

 ・・・何時の間にか手が汗ばんでいる自分に、

 少しうろたえを憶えながら、

 ちょっとニヤニヤする顔を隠せない

 気がつけば二人を乗せた車は大阪の街灯りが見えるところまで戻ってきていた



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