鼻の奥がカユクなるバツイチへの道


第2章 スキーへ行こう!
第3話 あんた




 どれくらい眠っただろう

 目が覚めても一瞬ここがどこだかわからない、

 旅先でよくある迷子のような感覚を味わいながら周りを見回す
 
 ・・・K子はいつのまにか寝返りを打って向こうを向いてしまっている

 肩まで掛けていたはずのスキーウェアも腰のあたりまで落ちていた

 着やせをしているのか、意外と大きな胸が

 セーターの下で呼吸のたびに上下に波打っていた



 何かを振りほどくように僕は強く目を閉じたあと起き上がり、K子に声を掛ける

 「おーい。朝やぞぉ」

 「う...う〜ん・・・いま、何時?」

 「もう9時半」

 「うそーぉっ!」

 言うが早いかK子は飛び起き外へ出た

 「あーもう! せっかくスキーに来たのにー! 寝過ごしたぁ!」

 スキーパンツとブーツを両手に提げて、着替えのためトイレへとすでに走り出している

 取り残されたような気分をほろ苦く抱えて僕も準備をはじめた


 スキーには絶好の天気!

 雪をかぶった山の頂上が青い空と美しいコントラストを奏でている

 さっそく一日券を購入し、リフトに乗っていきなり山頂へと向かう

 まだ営業が始まったばかり、それも平日のスキー場は人影もまばらだ

 当然リフトには前も後ろも僕とK子の二人っきりだ

 ゆうべのK子の寝顔がまぶたにちらつく


 「う〜ん、まだ少し眠いねー」

 「そうやねー居眠り程度やったもんねー」

 「帰りの運転、大丈夫か?」

 「え? 交代で運転するに決まってるでしょ? 大丈夫よ」

 「ジャンケンで決めへんか? 負けたら例えば黄色い車を追い抜くまで運転続ける」

 「アカーン、そんなん! アンタも運転する義務がある!」

 ・・・呼び方が「3太郎さん」から「アンタ」に変わった

 これは進歩なのだろうか・・・?




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