足の指の間が痒くなる心意気
2003年3月27日(木)「籠城」 |
飲み屋のトイレに籠もって気張っていたら(そんなところでそんな時に便意を催すな、と言う話もあるが)激しいノックが個室のドアを襲う。その飲み屋の男子トイレには個室は一つキリしかなく、しかもボクだって今入ったばかりで出たばかりなんだから、そうおいそれとココを明け渡すわけにはいかない。同様に激しいノックを内から返す。 ドアの外では相当に切羽詰まってるようで、足踏みの音も聞こえたりするが、出るモノは出る。これでもいつもよりも頑張ってるんだから。 そうこうするウチに何だか外の様子が変わってきた。ため息とも喘ぎともつかない、不規則で苦しそうな吐息の音が聞こえる。あー。さては……。 コレはひとつ急いでやらねば、と少しまだ未練はあったもののトイレットペーパーに手を伸ばしたところで、ついに力尽きたのか、洗面台で激しく嘔吐する音が聞こえた。申し訳ない、と思いながら一生懸命拭く。 と、そこへ、ゲロ男の連れとおぼしき男の声が。 「おい。大丈夫か?」 「ええ、まぁ……ハァハァ。うえっ」 「なんや、便所でせぇへんかったんかいな?」 「開かないんですよ、このトイレ」 ……「開かない」って。開かないのは別にドアが壊れてるわけでもなく、このボクが内側に籠もってるからなんだが。とにかく今この場に出て行くのは非常に気まずい。きっと憎悪にも似た視線を浴びせかけられるに決まってる。憎悪の視線、ならばまだ良いが、先程までその男の胃の中にあったものを頭から浴びせられてはたまらない。すでに拭き終わり、いつでも出て行ける態勢を整えつつはあったが、もう少し様子を見ることにする。もちろん息をひそめて。 やっとゲロ男も出て行ったような雰囲気に、ようやくズボンを上げて個室をあとに。自分の飲んでた席に戻ったら友人達にかなり心配された。 「おい、大丈夫か? そんなに弱かったっけ?」 ……ちがう! ボクじゃない! |