足の指の間が痒くなる心意気

2002年10月15日(火) 「ヤギ嫌い」

 ヤギが嫌いだ。目が嫌いだ、ヒゲが嫌いだ、ツブツブうんちが嫌いだ。

 小学生の頃、学校にヤギが飼われていた。当時はそうヤギ嫌いでもなく、な〜んとなく飼育委員になったワタクシは、来る日も来る日もヤギに餌をやっていた。いつもは給食のおばちゃんからもらえる野菜クズや、その辺の雑草を主な餌にしていたのだが、その日は土曜日で給食は無し、従って野菜クズも無し。雑草だけでは物足りなさそうな顔してるヤギ。そして見つめ合うヤギとワタクシ。

 目が横一文字だぞ、気持ち悪いぞ。ひげが生えてるぞ、えらそーだぞ。

 こんなヤツにまともな餌などもったいない。給食の野菜クズがまともな餌かどうかはハゲシク疑問であるが。かと言って雑草は喰い飽きたようだ。見向きもしやがらねぇ。何かないかとあたりを物色。…そうや。

 ランドセルから取りいだしたるは算数のテスト…38点。分数の足し算がどうしてもわからなかったのさ。よっしゃ。ちょうどええ。これや。これ、やったれ。

 赤文字で「38」と大書されたプリントを、ヤギの鼻面へ差し出す。興味を持ったのか生意気にも鼻をヒクヒクさせとる。
「バリリ」
お! 喰いよる喰いよる。
「もしゃもしゃもしゃ。ベェェェェェェッ」
鳴きよる鳴きよる。あっはっは。
またも見つめ合う、ヤギとワタクシ。しばしの沈黙が白く、重い。すると。
「…がぷ!」
あ。こら。か、噛むな。手ぇ噛むな! 痛てて。いててて。痛いって!

 あまりの驚きに声も出ず、いたずらに手首をふりほどこうとするが、ヤギはくわえ込んだ手を一向に離そうとしない。テストの用紙を持ったまま、右手の人差し指から小指まで四本まとめて噛まれている。痛みはだんだんと恐怖に変わってくる。左手でランドセルから定規を引き抜いてヤギの頭をシバく。ヤギは叩かれようが、つつかれようが、指を噛んだままなぜか微動だにしない。痛いのは痛いのだが、指に当たるヤギの舌の感触が生暖かく、また臭そうで実に気色悪い。ソレが一番イヤでひたすら定規でヤギをシバいていたら、用務員のオッチャンが「大丈夫か!」と叫びながら走ってきた。その迫力に負けたのか、ヤギは「ぱかっ」と口を開け、檻の向こう側へ何くわぬ顔で去っていく。

 助かった…その足で保健室へ。担任もやってくる。無惨にも引きちぎられた38点のテストは、わずかに原形をとどめつつまだ右手にあった。しかし一目で原因を悟った担任に、心配されるよりもまずこっぴどく怒られ、親にまで証拠隠滅がばれて、またもこってりと絞られ。ヤギのおかげで散々な土曜日を過ごす羽目になってしまったのである。

 それ以来ワタクシはヤギが嫌いなのだ。喰うなら、最後まで喰えよ、ヤギ。

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片言隻句

世の中を 細く長く見る ヤギの目か
長い目で見りゃ いいこと、あるさ  3太郎
下の句日々ハゲシク募集中です

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