足の指の間が痒くなる心意気
2002年9月22日(日) 「興味津々 〜日曜日の恋愛論」 |
「アタシ、アンタに興味あんねん」 こう言われても、その字義通りの解釈では、その言葉の中には、決して「スキ」だとか「愛してる」という「好意」までは読みとれない。 むかし、この通りの言葉を酔って口走ってくれた女の子がすっごく巨乳だった。性格とか顔とかそっちのけで、純粋に 「ボ、ボ、僕も興味津々です!」(目線は下方25°に据え置きで) などと言うと、すぐに彼女の方から手を握ってきて。 だけどその時点で非常に肝心なのは、その時すでにワタクシには恋人(前嫁)がいたということ。 だからまあ、ワタクシは蛇の生殺し、まさに地獄の苦しみを味わいながら、かろうじて手だけつないで飲み屋から500m程の駅まで散歩して。 もう、そこまでの道のりのホテルのネオンがまぶしくって。 つないだ手は汗ばむわ。 二の腕あたりに彼女のおっぱいがぼよんぼよん自己主張してくるわ。 ワタクシはと言えば、なぜかいつの間にかへっぴり腰になって歩いてるわ… はっきり言ってどこをどう通って駅にまで着いて彼女をお見送りしたのかほとんど覚えてない。しなかったというかできなかったのは確かな記憶なんだけれども、もしかするとそれは一生に一度の不覚だったのではないか? 逃した魚はおっぱいだけじゃなくて本当にデカかったんじゃないのか? 事実、ワタクシはこれ以来さっぱりと巨乳ちゃんに縁がなくなってしまったのである。 もう、悔しくて夜も眠れない。だから昼に寝てるのだが。 話を戻そう。 ところが困ったことに巨乳な彼女と前嫁は友達の友達という関係で、その話がもう次の日は筒抜け。前嫁とはその時点ではまだ結婚にまで話は行ってなかったけれども、そらもう怒る怒る。 「ちょっと、アンタ。N子になにしたんよっ!」 「な、な、な、何したって、手ぇつないだだけですがな…」 「手ぇつないだだけ? ほならなんでN子がアンタと付き合ってる、なんて言うわけ?」 「ひぇっ!? つ、つきあってなんかいましぇ〜ん!」 「じゃかっしゃい! 女騙すんかい!」 「騙してなんかいなーい!」 「きぃぃぃっ!」 結局小一時間かかって前嫁には諄々と言い聞かせ、「ただ酔って手をつないだだけである」ということでなんとか納めたのだが。 だが本当にただ手をつないだだけだったか? 答えはNOである。 その時には確かにお手手をつないでお散歩しただけだったが、その別れ際には、 「きっとその次に逢ったならば、あんなことやこんなことを、いっぱいいっぱいしたりされたりするんだろうな…」 という、もんのすごい期待感をもって彼女を見送ったのだから。 オカシナ日本語だが、精神的には既に肉体関係にあっただと思う。しかも互いに。 次の朝、酔いが醒めた胸の中でじっくりじっくり天秤まで引っ張り出して考えたけど、結局ワタクシの中では、彼女に対する「興味」は「興味」どまりでしかなく、そこから「スキ」にはならなかったのだ。 ただしかし、ここで「興味ある」という事前の言葉のやりとりがなければどうだったか? 単にそれは手をつないだという事実があっただけで終わり、言い訳はきっともっと楽だっただろう。「肉体関係」にもなり得なかったのだから。 ココまで考えると、「興味ある」という言葉には、やはり「スキ」というニュアンスが多分に含まれていたのだ、と痛切に感じる。…カエスガエスモ、オシイコトヲシタ。 手をつないだという、ただそれだけなら、ほんの軽いイタズラでも通用するのだが、その一言が添えられただけで、そのイタズラはずいぶんと色っぽい艶をもってみるみる形を成していく。 この場合、彼女の放った「興味ある」には相当の艶っぽさが含まれていた。 それに比べるとワタクシの口から出たそれは、その時の酔いほどの艶ではなかったんだろう。 ほんの少し言葉が加われば、イタズラでも恋になる。 ともすれば無味乾燥に収まってしまいがちな行為に、しっとりとした物語を添える決め手は、やはりどこまで行っても言葉である。ただセックスをするだけではなく、そこに言葉の彩りを置くだけで、「行為」は鮮やかな「恋」になるのだ。 そう考えると「スキだ」「愛してる」という直球よりも、「興味ある」というチェンジアップには、物語に必要不可欠なしめり気が幾分多く含まれているような気がする。 そしてこのわずかの「しめり気」こそが、人生にまで潤いを与えてくれる「恋愛の素」なのである。 |
片言隻句 変化球 タマに投げると 効果あり 直球だけでは 飽きられちゃうぞ 3太郎 |