足の指の間が痒くなる心意気

2002年8月6日(火) 不審者」

 わんこがひさびさに平日休みだったので、朝から京都をぶらぶら。ええ加減京都盆地の暑さに参って、昼過ぎに自宅最寄りの駅に戻ってくる。

 駅からの帰り道、西に傾き始めたお日さんに向かってわんこと二人で歩く。暑いながらも穏やかな気分の夏の昼下がり。そう、あの男を見るまでは…

 二人の行く手の木陰に一人の痩せた―病的なまでの痩せ方だ―男が座っている。白いTシャツに半パン、サンダル履き。服装はさほどおかしくはないのだが、一歩一歩近づいていく度にその男の異常さが徐々に明らかになってくる。

 目線が定まっていない。口元からはよだれが。左手は傍らのブロックをペタペタペタペタ叩いている。叩き続けている。酒か?クスリか?とにかく尋常な様子ではない。

「わんこ…ボクのこっち側を歩きなさい」
できるだけわんこをその不審な男から遠ざけたい。しかし、その男は定まらぬ目線ながら我々を確実に捉えているようだ。5m…2m…1m…男との距離が徐々に縮まっていく。悟られぬように身構えつつ、横を通り過ぎた。

 …よかった。何事もなく通り過ぎた…と思った瞬間、視界の隅で男が立ち上がるのが見えた。「ぺたし、ぺたし」と、サンダル特有の足音を響かせ、男は我々の後ろ、約10mの距離をつかず離れず歩いてくる。

 いつもなら右に曲がる踏切をやり過ごし、直進する。視界の隅で、悟られぬよう男の姿を捜す。男の姿は…消えていた。

「何なん? なんかもう…気持ち悪かったねぇ」
「いやホンマに。ちょっと緊張したな」
「夏やからねぇ。ああいう人たちも出てくるんやねぇ」
「そやな。冬やったら出てけぇへんもんなぁ」
「うんうん」

 ほどけた緊張感が二人の会話を後押しする。回り道をして、少し先で線路をくぐる小さな細いトンネルを選ぶ。そのトンネルを抜けると、自宅マンションの前の道路にでるのだ。そしてその道の反対側の歩道の段差に腰掛けていたのは…さっきの男だった。真っ正面から視界に飛び込んできたその男の姿に、凍り付いたように立ち止まってしまう二人。一瞬の凝固の後、わんこを促して歩き出す。男も案の定立ち上がった。「ぺたし、ぺたし、ぺたし…」男の足音がマンションの壁に反響する。その距離、約15m。

「わんこ、先に行け。鍵持ってるやろ?」
「うん、わかった。3太郎さんは?」
「ええから。先行け」
「う…うん」

 わんこを先行させ、少しゆっくり目に歩く。わんこが無事にマンションの中に入ったことを確認し、ワタクシも少し遅れて別の入り口からさっと入った。男はまだ直進してくる。
(いったい何が目的なんや?)
 急いでわんこが入った方のエントランスへ回り込む。そこでもし、その男がなおも侵入してくるようなら、とにかく排除しなければならないだろう。

 男はエントランスの階段に腰掛けたまま動かない。やはりわんこが目的だったのか? しばらく陰から見守っていたがそこから移動する様子もなかった。いつもならエントランス周辺で遊んでいる子どもたちも、その時はいなかったので、特に今どうこうする必要もないか、と気付かれぬよう自室に入ることに。

 おかげでそれから部屋から一歩も出られず。まあ予定通りなのではあったが。
要するにすぐ外に不審者が居ようと居まいと、することはするのである。ああ、夏の夜。汗まみれ汁まみれ。

わんことの会話に似せた日記才人の投票ボタンです

登録は簡単! 押すと「オチ」が見れます!
できれば! 登録いただけると励みになります!
片言隻句

ケンカなら 絶対負けない 場合のみ

フックだ パンチだ かかと落としだ
まうまうさま

だからできない 夫婦喧嘩は
伝助さま


負けるケンカは アフォがするもの  3太郎
下の句日々ハゲシク募集中です

戻る     次へ     前へ