足の指の間が痒くなる心意気

2002年8月5日(月) 「鼻毛

 「鼻毛は抜く派」である。昔は「切る派」であったが、ある時ハサミで鼻毛を切っていると「プチ」という小さな音とともに大量の鼻出血を引き起こして以来、「抜く派」へと転向した。

 それにしてもオッサンはなぜあんなに鼻毛を露出させても平気なのか? ご丁寧にも両方の鼻の穴から「にょき〜っ、にょき〜っ」と毛が飛び出させている方もいらっしゃって、その図はいかにもオッサンである。こそばくはないのか?むずむずしたりしないのか?まさに「小一時間問い詰め」たくなってしまうのだ。

 「抜く派」への転向を果たして以来、日に一度は鏡の前で「ブタの鼻」をして鼻毛のチェックをする。長い鼻毛を見つけると何だかうれしい。いそいそと毛抜きを取り出し、鏡に鼻の脂が付くくらい密着して抜き始める。なかなか狙いが定まらず、全く関係のない鼻毛まで抜いてしまう。そんな苦労の末、やっと抜けた黒く太く長い鼻毛をまじまじと見つめ、うっとりとした達成感にしばし浸る。ちなみに今までの最長記録は全長約2センチであった。その甲斐あってか、オッサンとオッサンでないモノの差が、「鼻毛が出ている、出ていない」というラインに求められるのならば、ワタクシはまだオッサンではない、と胸を張って言える。かろうじてオッサンではない、と言い切ることができるこの唯一の切所を守るために、夜な夜な目にうっすらと涙をためながら、鏡の直前まで顔を寄せ、「ブタの鼻」をしている30代半ばの男。…痛すぎる。いろんな意味で。

 しかし鼻毛は決して無駄に生えているのではない。そう、決して無駄毛ではないのである。空気中に浮かぶホコリや異物の鼻腔への侵入を防ぎ、鼻粘膜を守っているのだ。鼻腔の中に異物が侵入すると、鼻毛に引っかかり、くしゃみをしてその異物を鼻の穴から取り除こうとすることが、鼻毛の最も重要な役割なのだ。俗に都会に住む人は田舎の人に比べて鼻毛の成長速度が速い、と言われるが、それはやはり真実であるようだ。人は環境に微妙な差ながら適応を果たしていくモノなのだ。

 さて今日も今日とて鼻毛を抜こうと、鏡の中をのぞき込んでふと気付いたのだが、最近鼻の中が妙につるつるしているのだ。そう、鼻毛がなくなりつつある。鼻の奥の方まで、鼻毛に邪魔されることなくすっきりと覗けてしまう。たしかにワタクシの住居は都会とは言えないところである。その上、職場について言えばカンペキに山の中なのだ。さりとて一概には、その環境のせいだから、だとは思えないほどツルツルした鼻の穴。きっと「鼻の穴エステ」なんかがあるとしたら、その新聞折り込み広告のモデルを立派に果たすことができるであろうほど美しい鼻の穴。…どうも最近鼻クソがたくさん出るなと思ってたら、鼻毛という異物へ対する防御壁がすっかり抜き取られてしまったからだったのか。

 しかし、やめられない。あの長い長い鼻毛を抜き取ったときの達成感は、今やワタクシの「小さな幸せNo.1」にランクインされて久しい。あの達成感を得るためなら、たとえ見知らぬ他人のオッサンの鼻毛を抜いてやってもイイ、とさえ思い始めている。もちろんそれが美女の鼻毛であれば言うことはないのだが。

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片言隻句

黙々と 夜中一人で 鼻毛抜く

背後に感じる 何かの気配
まうまうさま

目に涙 鼻毛5cm 初抜けた
志さま


鏡の中に 涙の瞳  3太郎
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