足の指の間が痒くなる心意気

2002年5月8日(水) 「面影もなく…」


神戸の中学校にキャンプの説明会に行った。

車で出かけていたのを幸い、そして予想外に早く終わったのも幸いにして、

雨の神戸の町を少しドライブした。


新神戸から西へ向かう。

中央区から兵庫区、長田区…

この道を右へ曲がると10年ほど前まで、爺さんと婆さんが住んでいた町へ出る。

震災の5年位前、足腰が起たなくなり、

爺さん婆さんは泣く泣く住みなれた町を後にして

伯父の住む三重県に遠く引き取られていった。

今思えばそれが幸いしたのではあるが。


信号待ちの間、それなりに迷ったがウィンカーを右に出し、車線を変え、

懐かしい町並みへと車を進めた…つもりだった。

地下鉄の駅の出口から始まる商店街の入り口には

昔と同じ大きな神社の赤い鳥居。


同じなのはそこまでだった。

巨大なマンション、大きく広くなった道路。

記憶の中にあった焼き塀で囲まれた木造の家の立ち並ぶ、

人の居住まいの香りのする町並みは

無機質なコンクリートの羅列へと姿を変えていた。

震災のせいなのか、いわゆる一般的な再開発なのか、その両方なのかは、知る由もない。

雨の降りしきる中、車を降りて。

爺さん婆さんの家があったと思われる、

今は立派なタイル敷きの歩道になった場所にしばしたたずみ記憶をたどる。

子どもの頃走り回った懐かしいあの町並みの面影はどこにも見出せなかった。

たどるべき記憶の糸をプツリと切られ、寂寥感に襲われ途方にくれる。

…爺さんはもうこの世にはいない。

変わり果てた町並みを見ずに死んでしまったことは、きっと彼にとっては幸せなんだろう。


水と緑に囲まれた、自分の今住んでいる町は20年たったらどうなってしまうのだろう。

20年後のその町に住む人々はどんな人たちなんだろう。

かつて爺さんの町だったここと同じように、

ご大層なビルが無機質に配置され、無機質な人たちがただ並んでいるように住んでいる…

そんな町で育つ子どもたちは、いったいどんな表情をしているのか。

そう思うと寂寥感に押しつぶされそうになって、逃げるように車に乗り込んだ…

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