足の指の間が痒くなる心意気

2002年1月28日(月) 「哂(わら)うおばちゃん」


大阪まで出かけた

JR快速電車で約30分

日曜のお昼だったので席には座ることができた

たまたま座ったのが2人がけずつ4人の対面座席

隣には週刊誌を片手にしたスーツ姿の初老の男性

はす向かいには茶髪のにいちゃんがウォークマンを聞きながら眠りこけている

そして問題の正面向かいの座席には白いコートをまとったおばちゃんが。

電車が走り出して5分ほど経ったところから、異変は始まった…


僕の向かいの席のおばちゃんが突如として哂い始めたのだ

最初僕は文庫本を読んでいたのだが、ふと目を上げるとニヤニヤ笑いのおばちゃんの顔

(え?なんか、顔についてるんかなぁ…)と思って顔を手でぬぐった…何もない…

そして、どうもおばちゃんの目線は少し違うところを見ているような…

その目線の先を横目でたどってみても…どうもそれらしきものは見当たらない

(おかしいな。思い出し笑いやろか?変な人や)と再び文庫本に目を落とす

しかし。

おばちゃん、笑顔だけで収まらず、少しずつ少しずつ笑い声が漏れてきたようだ

「んふんふんふんふ。んふぅふぅふぅふぅ。んふふふっふ…」

な、なんや、このおばはん!

もはやおばちゃんの顔をまとも見ることは非常に危険かと思われ、

文庫本の隅から上目でちらちらと覗き見る

「ンふんふんふんふふふふふふふふふふふ。んふふふふふふうふふうふうふふうふうふ」

もう、はっきり笑い声になってきている

となりのおっちゃんも気づいたようだ

驚いた顔をしておばちゃんの顔を凝視してるのが横目でわかった

(だめだ、おじちゃん!そんなにしっかり見たらだめだだめだ!)

僕の心の叫びはむなしくこだまするのみ

その間にもおばちゃんの笑い声は徐々に大きく、徐々に長くなっていく…

「んふんふ。あは。あはは。ンふふうふふふうふうふうふふふんふんf」

(も、もうだめだ)

先ほどから僕の中にこみ上げてくる衝動が二つあった

一つは、この場から逃げ出したい、という衝動

そして、もう一つはつられるようにこみ上げてくる笑いたい、という衝動だ

(あ、あかん…笑ろうてしまう)

席を立つ余裕すらなく、左右の頬が上に引っ張られる自然の力に逆らえない

文庫本で不自然に顔を覆い、本の下で満面の笑みを浮かべる僕

横目で見るとおじちゃんも噴き出しそうな顔をしている

そして寝ていたはずのはす向かいの兄ちゃんも気づいてしまったようだ

あっけにとられた顔で自分の隣のおばちゃんを眺めている

ついで僕の顔と向かいのおじちゃんお顔を眺め、

我々と同じように下を向いて肩を震わせニヤニヤし始めた

その間もおばちゃんの哂いは続いている

大阪駅に着くまで約20分間、そのままおばちゃんの哂い声を聞かされた

僕とおじちゃんとにいちゃんはつられてニヤニヤ笑いっぱなし

その周辺の乗客にも徐々にニヤニヤ笑いが伝播し始めたころ

やっと大阪駅に着いた

これ幸いと席を立ち、ドアに向かう

一緒に降りるおじちゃんとにいちゃんとさわやかな微笑を交わして、僕はホームに立った


振り返ると4人がけの席に一人残ったおばちゃん

顔は相変わらずニヤニヤしているまま

その席に、新たに座った3人の乗客は、しばし不思議な旅を共にすることだろう


あのおばちゃん…また、会いたいような、そうでないような…

日記才人の投票ボタンです
片言隻句

笑う門 福が来るかと 笑ろてみる

来たよ来たわよ ふくすけちゃん
まうまうさま

思い起こすは 君との日々よ
志さま

笑いは福の 始まりなりけり  3太郎
下の句日々ハゲシク募集中です

戻る     次へ    前へ