足の指の間が痒くなる日記

10月25日(木)
島原の乱(1637年)
最初の神風特攻隊がレイテ沖海戦に出撃(1944年)
戦後初の民間航空機「もく星号」羽田を飛び立つ(1951年)
リサイクル法施行(1991年)


職場の先輩から聞いた話

その方(以下Yさん)はその昔「トビ職人」でした

建設現場などで高いたか〜いところに登って作業する特殊技能者です



全国津々浦々の現場を回るYさんがある地方都市のビル建設に携わったとき

降り続く冬の雨に仕事がない日々が続きます

宿はと言えば、安ホテル(いや、「旅館」のほうが適切)、しかも何十年も昔

テレビなんぞもあるはずもなく、仕事仲間と時間を持てあますばかり

先輩と二人で部屋でぼぉっとしていたYさんに、その先輩ががふいにこう言いました

「おい、みかん食べようか?」

「あ、そうやな・・・ひまやし」

「どうせここも長くなるし、一箱まるまる買うてこいや」

「ああ、そやな」

Yさんは近所にあった八百屋でミカン一箱を買い求めるべく雨の中出かけていきます

当時の「ミカン一箱」はもちろん木箱、それも今より5キロ多い、15キロ入りです

ずぶずぶに濡れながらひぃひぃ言いながらミカン箱を抱えて帰ってきたYさんを見て

「う〜ん、一箱ではつまらんなぁ…もう一箱買うてきてや」

「え?なんでまた」

「うん、ええからええから」

言われるがままにもう一箱をずぶずぶのひぃひぃで、ミカンとともに帰ってきたYさんに

「さあ、どっちが先に一箱食べれるか、競争しよか」

もうここまできたらナチュラルハイのYさん、ニヤリと笑って

「よし、しよか」

さあ、そこから二人でそれぞれ15キロ入り木箱を前に

ムイテハ食ベ、ムイテハ食ベ、ムイテハ食ベ…

いつ果てるとも知らず二人の無言の戦いは続きます

手が一面に黄色くなり、口の中はざらざら、もう腹もダボダボ…

といれニ行ッテハ食ベ、再ビといれニ行ッテハ食ベ、再三といれニ行ッテハ食ベ

ミカンの皮を撒き散らしつつ、ひたすらミカン箱との闘いはまだまだ続くのです

何が二人をそこまで駆り立てたのか今となっては誰にも知る由もありません

そのとき、二人の部屋をのぞきに来た宿のご主人が

そのあまりに悲惨な光景を見て・・・


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