耳の穴がカユクなる恋愛絵巻

「アウトドアな恋」その3

テントの中は月の明かりで思ったよりも広く明るかった。

マットを敷き、寝袋を二つ並べる。それぞれ寝袋に潜り込み、横になった。…顔がすぐ目の前にある。

こんなに可愛かったんや…あかん。彼女のほう、向かれへん。

寝返りを打ちかけた僕の肩に、彼女の腕がかかる。彼女は肩に回した手に力を込めた。その瞬間、心の掛け金がはずれた音を聞いた。反射的に向き直って僕も彼女を抱きしめる。最初はそっと、そして強く。

抱きしめあったまま身じろぎもできないまま、どれほどいたのだろう。彼女の髪の香りで、すでに満たされたような気がしていた。不意に彼女が顔をそらし、また目と目が合う。それもまつげが触れ合うくらいの距離で。

「ワタシ、3太郎が好きなん。好きなんよ」
「うん、俺も…」
「知ってた」

キスをした。
ここまで堪えていた感情を一気に解き放つような、深い深いキスだった。彼女は最初、その深さに驚いたようだったがすぐに目を閉じ、まさにむさぼるように互いの体温を味わった。

自然と右手が彼女の胸に降りる。
「…だめ」
口の中で彼女が小さくささやく。いったん手を引っ込め、またキスをする。
右手が降りていく。彼女が拒む。手は戻る。
何度か繰り返したが、その小さな拒否を乗り越えることはさすがにまだできなかった。

そのままいつの間にか眠り、抱き合ったまま朝を迎えた。テントの隙間から朝日が差し込んでくる。いつもと変わらぬ朝だったが、二人にはいつもとは違う景色に見えた。

朝食をともに作る、その間もキスを交わす。文字通り生まれ変わったような、そんな朝だった。

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