耳の穴がカユクなる恋愛絵巻   

第七夜 大学5年生
 The Electric Love その3 

こうして二人のつらくて果てしない「静電気克服」への道のりは始まりました


しかし・・・

僕は結果を求めすぎていたのかもしれません

僕は彼女に必要以上に厳しくしすぎたかもしれません

M美にしてみれば、静電気体質であることを告白した以上

無条件にかばってもらえると甘い予想をしていたようです

しかし、豈はからんや…

M美にとって不幸だったのは相手も自分以上か自分に匹敵するかのような

静電気体質だった、ということ

かばってもらえるどころか鬼コーチのような突き放しっぷり

しかも鍛えたからって治るものではなく
今のように静電気除去のリングなんてなかったですからねぇ

逢うたびに心にすり傷ばかりが増えていく…

そんな日々を二人して過ごしていました

ふと見渡すと、前よりもずっと二人の距離が広がってしまっていることに

気づいてしまったのです


もう、二人の間の谷間の距離は橋をかける手がかりもないように感じられました

「別れよう…ここまできてしもうたら…それしかあらへん…」

もう、こう言うしかなかった…

そういうと、彼女もふっと肩の力が抜けたようです

久しぶりに手をつなぎ、大阪の北港にある大きな水族館に最後のデートに出かけました

大きな水族館の前には大きな大きなクリスマスツリーがにぎやかに明るく輝いていました

「今年のクリスマスは、どうしてるんやろなぁ…」

誰に言うともなくつぶやく…

小さくうなずくM美…

二人は手をつないだままごく自然に、久しぶりの、そして、最後のキスをします

「あ、ビリッとせぇへんかった…」

「そうやね…?」

「これ、かな?」

つないだ手を二人で見つめます

「最初っからこうすれば・・・」

「もう…遅いよ」

「…そう、だね」

「じゃ、元気でね」

「君も、ね」

そしてM美と僕は、二人のアースになっていた手を離し、

それぞれの路を歩き始めたのです…

……Fin

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