耳の穴がカユクなる恋愛絵巻   

第七夜 大学5年生
 The Electric Love その1 

今から約10年程前、大学5年生のころ…

1年前の失恋から立ち直ることも出来ず、

なかなか次の恋に巡り会えないでいた3太郎にも

ようやく次の恋のチャンスが巡ってきました

もちろん、少しビビッてもいたんですが、このままでいたってしょうがない

もしかしたら、この人が何かを埋めてくれるかもしれない

そう思って付き合い始めたのです

それは僕のエゴだったのかも知れませんが…

そして、やはり別離は来ました

わずか半年…冬の訪れとともに、それはやってきたのです



付き合って半年、ここまでは至って順調な恋でした

彼女―M美―は僕の心の痛みを癒して余りある存在でした

僕もM美にとって、大きな存在になりつつあったころ、

二人は初めての冬を迎えつつありました

そのころからです

なぜか二人の間がギクシャクしてきたのは…



原因は明らかにM美の側にありました

キスをしなくなりました

させてくれない、といったほうがより正確でしょう

そういう雰囲気になると、つい、と目線をそらし話を変える…

別れ際のキスを避けるように、きびすを返して去っていく…


また気のせいか僕に対して尊大にも思える態度をとるようになりました

車のドアを絶対に自分で開けようとしない

僕がたくさん荷物を抱えていたとしても

絶対に僕に開けさせるまで車には乗らないのです

最初は、お姫さまごっこでもしているのか、と思っていました

「はいはい、お姫様、どうぞお乗りください」と

こっちもふざけて遊んでいたのですが、

たび重なってくるといい加減うんざりです

何だか良いように使われてごほうびもくれない、

貧乏サーカスの象にでもなったような気分を逢うたびに味わっていました



なぜ、こんなことを繰り返すのか…

いつまでこんなことを繰り返さなければいけないのか…

ある日彼女に思い切って聞いてみました

M美もある程度覚悟はできていたようですが…

言い淀むM美…

最悪の展開が現実になるのか…

ふいに問い詰めたことへの後悔の念が心の中を覆いはじめます

「…あ、あのね、私…」

どうしよう?このまま聞いてしまっていいのか?

聞かなかったことには、今からでもできるかもしれない

どうする?聞いていていいのか?

「私…私ね…」



……明日へ続きます

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