耳の穴がカユクなる恋愛絵巻   

第五夜 高校2年生夏
 3太郎初デートの巻 その2 

「こんにちは、渉外担当の3太郎です・・・○○さんは・・・?」

「あ、はい、わたしです」

「あ・・・では、ご案内します」
う〜んまぁ、ボチボチって感じかな・・・

途中すれ違う我が校の男どもの好奇心に満ちた視線を浴びながらかき分けながら

音楽室へと20人もの女子高生を引き連れて進みます

我が校の男どもも思わずその迫力に道をあけ、気分は大名行列か、はたまたモーゼか・・・

「みなさんはここら辺は初めてですか? 汚いところですいません」

「え、いや、そんなことないですよ」

などとまた少しぎこちなくなってしまった会話を交わしながらようやく音楽室へ

待ち受ける我がクラブの面々も少し緊張気味です

顧問の教師の型どうりのあいさつのあと、お待ち兼ねの茶話会です

ジュースやお菓子をつまみながら音楽の話やなんやかやで少し全員の気分もほぐれてきたようです

「なんとか会話も弾んでるみたいですね」

「そうですね。よかったよかった」

などとお見合いの仲人のようなお間抜けな会話から少し彼女と話をする時間を持つことができました

(お、笑うとけっこう可愛いなぁ、この子・・・)

「ライブまで1ヶ月ですね、頑張りましょう!」

「はい!」

・・・・・・
ミーティングも無事終わり駅まで全員でお見送りです

その帰りの道すがら同学年のN君が

「おい、3太郎、すっごい可愛い子ひとりおったやろ?」

「ん? ああ、おったおった」

実はひとり、目を引くような可愛さと美貌を兼ね備えた子がいたのです

「あの子と仲良くなりたいなぁ・・・お前、何とかしてくれへんか?」

「どないか、ちゅうたって・・・どないすんねんな」

「あの、ムーミンのスナフキンに似てる、あの渉外の子から何とか・・・」
スナフキンって君なぁ・・・

「もう、ライブが終わってからにせぇや、下心見え見えになってまうやんけ」

まあ、事実下心アリアリなのですが・・・

おかげで部員たちの練習にも一層熱が入ります

ライブも近づいてきたある日、ちょっとした連絡で渉外の彼女に電話を入れました

一通りの事務的な会話のあと、

「あの・・・ちょっと電話では難しい連絡があるので、少しだけ会って話せませんか?

「あ、・・・かまわないですが」

「では、明日、梅田の▲▲で時ごろ。あ、ほんの少しですから」

まだFAXすら一般的でない時代のお話です。今だったらメールやFAXの普及でこうはいきますまい

それにしても・・・話っていったいなんでしょう? やっぱり事務的なことだけなんかなぁ・・・

またまた妄想ではちきれんばかりの3太郎

ニヤニヤしたまま明日を待つのです


・・・次回へ続く

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