耳の穴がカユクなる恋愛絵巻   

だ〜か〜ら〜 タワゴトだって言ってるでしょうが! しつこいなーもう!

第三夜  中学校1年
3太郎、茶封筒でラブレターを出す!



 
ラブレター・・・みなさん一度は書いたことがあるでしょう?

 片想いの相手に。

 めでたく両想いになった大好きな彼氏彼女に。

 いまだ巡り逢わぬかの人に。

 愛しい家族に・・・

 その想いのたけを幸福と自己陶酔、または欲望と思い込みなどで包み込み、

 相手のことなど考えずぞんぶんに書き散らし撒き散らしぶちまける
・・・

 なんて甘美ならぶれたぁ・・・

 夜中じゅう書いて書いて書いて書いて書いて、翌朝見返して、

 「ごふぅ(吐血)」・・・顔面蒼白あるいは大赤面してしまう

 恥の凝縮
らぶれたぁ・・・

 3太郎がはじめて書いた
らぶれたぁも細かい文面こそ憶えていないものの

 (いやあえて忘れようとしているのかも)

 か〜な〜りの恥モノでした・・・


 
れて中学1年生。徒歩20分、しかも小高い丘というより小山の上にあった小学校から

 徒歩3分、走って1分、ケンケンで5分の近い近〜い中学校へと進んだ3太郎は

 ますます怠惰な生活を送るようになりました

 朝はぎりぎりまで寝て、多かった遅刻は距離と反比例で倍増。「正座王」の異名を拝命しました

 昼は家に帰ってきてテレビ見ながらラーメンをすする。当然弁当はもう午前中に食べている

 さらには
風呂嫌い・・・

 だらけてました・・・堕落してました・・・”ガチャピンの幼虫”「たれぱ●だ」顔負けでした

 テレビを見てるといっても当時流行っていた歌手

 (たのきんトリオや聖子ちゃん、明菜ちゃん)などはまったく知らず、

 アニメやお笑いばっかり観ていました

 要するに流行おくれの不潔なタイプ、

 今でいう「オタク」のイメージに近かったかもしれません
 
 そんな私に目をつけられた可哀相なイケニエ

 中一の冬に名古屋から転校してきたくせに標準語を喋る、J子ちゃんでした

 彼女は背が小ちゃくて色白で目がきれいで・・・要するに
タイプだったんです


 転校してきた彼女の席は偶然にも私の隣でした

 田舎都会の新興住宅地だった私の通う中学校にはいないタイプの

 あか抜けて、親しみやすく、話しやすいJ子ちゃんの隣に座ってクダラン話をするのが楽しくって

 だんだん遅刻も少なくなりました


 
そう、は人を変えるのです
 

 しかし、そんな浮かれた私にトツジョ恋敵が・・・!

 彼女をはさんで向こう側の隣に座っている、ちとヤンキーぽいヤツでした

 ヤツもいい雰囲気でJ子ちゃんと喋っています

 おおおお、これはどうしたことだ! このままではイカーン!

 嫉妬の炎に身を焦がす3太郎、しかしいろんな意味でピーンチ!


 
シバかれるかも、でもJ子ちゃんとのおしゃべりは幸せだ・・・

 イッソのことヤツと
サシの勝負をするか・・・?

 イヤすぎます。敵はヤンキーです。

 一人倒しても仲間は
ショッカーの戦闘員よかたくさんいます

 ではあきらめるか・・・否! そうもいきますまい

 ちょうど席替えもあり何となく彼女とも疎遠になりつつありました

 コノママデハイケナイ、ナントカセネバ・・・

 そうだ、彼女の
ハートをガッチリつかんじゃえばいいんだ!

 
俺ってあたまE〜(←超死語)

 でもどうする? 直接告白か? 

 ぷるぷるぷるぷる・・・そんな度胸があるのならとっくにショッカーと戦ってます
 
 コノママデハイケナイ、コノママデハ・・・

 悩みに悩んだあげく、「そーだ! 
らぶれたぁを書こう! そーだそーだ、おお、そーだ」


 早速家に帰って茶だんすの引き出しを探ります

 出てきたのは愛想もクソもない
白い縦書きの便箋と、

 
ペラペラの茶封筒・・・

 安い薄い紙でできた、紙そのものに縦の細かい線の入っている、

 どこからどう見たって
らぶれたぁを入れるようなシロモノではありません

 せめてファンシーな便箋と封筒くらい買えよお前わって感じですが、知らんということは強いものです

 流行おくれの中坊にはある意味これで充分!

 さあ書くぞ! って書き出したのがまた
鉛筆で・・・もうどないやコレ・・・

 遅くまでかかって書き上げた、恥めてらぶれたぁ
・・・

 朝に読み返せばいいものをできた勢いで茶封筒に入れ、ノリでべたべたガッチリに封して

 夜中なのに自転車で近くのポストまで全速力で・・・ポトン・・・

 ああ、なんて取り返しのつかないことを・・・

 しかし本人は意気揚揚で高いびきです


 それから2,3日・・・もうあの
茶封筒は彼女のところへ届いているはずです

 話すこともできず、チラリチラリと横目で様子をうかがいます

 まったく無反応です。何も変わった感じはありません・・・

 「あれぇ? まだ着いてへんのかなぁ?」

 しかし、何日経ってもまったく変化が現れません

 どうしようかと再び悩み始めたとき、耳にあるうわさが飛び込んできました

 「J子に誰かがラブレターをだしたらしい・・・
茶封筒で! うぷぷぷぷ・・・

 差出人が誰かなのかは超ラッキーにも漏れていないようです・・・

 が、そのとき恥めて自分のおろかさに気付いたのです

 茶封筒って・・・アカンかったんや・・・」

 恥を知ってしまうともう今さらJ子ちゃんに回答を求めるなんて勇気が起ころうはずもありません

 毎日同じ教室で過ごすのが痛すぎます

 彼女もカンペキに私を避けています

 ああ、針のむしろ・・・禁断の果実を食べてしまったアダムとイブの気持ちが痛いほどわかります

 しばらくして・・・

 幸か不幸かそれからまもなくJ子ちゃんは再び転校していきました。

 かくて私の
恥めてのらぶれたぁは永遠に封印されることになりました

 なぜか・・・ホッとしました

 ああ、なんて醜い自分・・・
 
 今一番怖いのは、いつかあの
らぶれたぁをネタに強請られるんじゃないかということ・・・
 
一生奴隷でもいい。奴隷でもいいから、やめてくれ〜

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