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23 家族文化の継承

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私たち人間は他の人に向かって言葉をかけたり行動で働きかけたりすることで何らかのメッセージを発信しています。このとき、相手がどんな反応(言葉、態度)を返してくるか、ある程度予測をたててから動いているものです。
もっと言えば、期待する反応を引き出すために最初の行動を選択しているはずです。
予測の根拠になるのは今までの経験です。とくに、親のように長時間くりかえし接触している相手とのやりとりから基本的なパターンを学んだはずです。
各家庭に固有のコミュニケーションの傾向はけっこうあるのですが、どっぷり家庭の水につかっている間は気づきにくいものです。親元から外へ出て他人と交流しようとして初めて、自分の経験がすべての人に通用するわけではないと知ることになります。
父親が母親を毎日なぐるのを見て育ち、男女関係とはそういうものだと学んで育った女性が、そうではない家庭で育った男性と交際したとします。
暴力をふるわない男性は女性にとって望ましいお相手のはずですが、女性からすれば彼の反応は今までの経験からは説明のつかない不可思議なものに見えるかもしれません。
よくわからない反応をかえしてくる相手にとまどい、相手の行動を予測できない不安と折り合いながらも自分の経験を修整していける人もいるでしょう。
一方では、未知の文化をとりいれていくかわりに、幼い頃から慣れ親しみ、よくわかっている対人関係パターンを知らず知らず選択してしまう人もいます。
生まれた家や地域を離れても、似たような家族文化を背負った人どうしが呼び合い、くっついて文化を継承していく。その文化が個人にとって好ましいか否か、そんな判断よりもとりあえずの「慣れ、なじみ」が優先されてしまうことがあります。
夫の暴力に悩んで離婚した女性が再婚してもまた同じような暴力をふるう男性を選んでしまう。そういった現象が現実にはかなり起こっています。

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