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22 暴力を前提としたコミュニケーション

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自分の欲求をとおすために暴力をふるうことを前提として考えている人は、そうでない人を相手にする時にも特徴的な行動をとります。
なかでもよく使われる手法が、「威嚇」と「挑発」です。

「威嚇」というのは、自分にとって有利な条件を相手に飲ませるために、直接暴力をふるうかわりに「ここで引き下がっておかないと痛い目に会うぞ」という脅しをかけることです。暴力をふるわれることを恐れる相手が自分から行動修正することで、「相手の自主的な行動だ」と主張するのです。
「挑発」というのは、相手をばかにしたり言葉で傷つけたりすることで、相手から暴力を引き出す手法です。相手をむりやり自分の土俵にひきずりこみ、「先に手をだしたほうが悪い」と主張して公然と暴力をふるおうとするのです。

ふだんは暴力と縁遠い生活をしている人や、力関係では立場が弱いと自覚している人ほど、このような態度をとられたときに冷静な判断をできなくなる面があります。(そのような人ほど狙われやすいのも事実です)
ふいをつかれて相手の行動原理にまきこまれないためには、相手の目的や手法をある程度心得ておく必要があります。
威嚇に負けて言いなりになるのも困るのですが、挑発に乗ってさきに手を出すのも賢い行動ではありません。

「あなたのしていることは威嚇/挑発です。そのやり方はここでは通用しません」と言い切る勇気が試されるのです。

暴力に慣れ親しんでいる人達のあいだでは、このようなコミュニケーションが日常的にとりかわされ、お互いの序列を決定するのに利用されています。脅し、脅され、逃げようとする者は追いかけ、かかってくる者があれば力を量り、支配と被支配の関係だけで立場を決めていくわけです。

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