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15 乳幼児の虐待死

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厚生労働省が発表した統計の数字を見てみましょう。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv37/dl/6-08.pdf

平成20年4月から平成21年3月までの1年間に虐待により死 亡した子どもの数は、心中以外が67人、心中(親が死亡しなかった場合を含む)が61人でした。
心中以外のうち、0歳が 39人(59.1%)、1歳と2歳が4人(6.1%)、3歳が3人(4.5%)であり、0歳が半数以上を占めていました。また、3歳以下の合計が50人(75.8%)でした。
0歳児の詳細をみると、26人(0歳児の 66.7%)が生後1か月に満たず、さらにそのなかで日齢0日が16人(0か月児の 61.5%)でした。

日齢0日で殺されたのは、はじめから親に育てる気がなかった赤ん坊です。
婚外子で家族や周囲に知られたくない、望まない妊娠でどうしたらいいかわからなかった、中絶や育児の費用がない、といったのが理由です。
産みの親に子供の命を守る気持ちがなければ、人間は一日たりとも生き延びられないということです。
(逆に言うと、たった今この世に生きている人間は全員、誰かが育てたから生き延びた、ということです。皇族も有名人も殺人者も資産家も貧乏人も関係ありません)

1日以上生き延びた子供は、その期間は親なり誰か大人に育てられたということです。大人の側に育てる意志があったにもかかわらず、どこかの時点で死亡させてしまっているということです。

3歳未満の子供でみると、身体的虐待による死亡が28人(59.6%)です。直接死因で一番多いのは溺水の8人、続いて頭部外傷と頚部絞厄以外による窒息がそれぞれ7人ずつです。頭部打撲による脳障害の1名を加えると、頭部への暴力による死亡は8人になります。
溺水と窒息には明確な殺意があるのでしょうが、頭を殴る、つきとばす、落とす、といった行為にはその時かぎりの衝動性がうかがわれます。
わかった範囲での動機でいうと、「泣きやまないのでいらいらした」「パートナーへの愛情を独占されたなど子供に対する嫉妬心」「子供がなつかない」などがあげられています。

なお、虐待者で一番多いのは実母で、その次が実父です。実父母あわせると3歳未満児のうち39人(82.9%)にのぼります。
実の親がそれまで育てていたにもかかわらず、暴力的に命を奪われた乳幼児がこれだけいたということです。

これは死亡した子供だけの統計ですが、この背景には頭部外傷を負いながら死ぬまでにはいたらなかった子供がもっとたくさんいるはずです。
乳幼児期の頭部外傷は身体障害、知的障害、高次脳機能障害などの原因となります。
親が自分たちの衝動的暴力によって、我が子を殺す、障害を負わせる。育てるつもりの子供を殺してしまうとか、育児を負担に感じながら、結果的に子供をもっと育てにくくしているという現象がみられます。

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