今から30年以上前のことですが、私自身が通学電車内で痴漢にあい、相手の手に思い切り爪をたててやったことがあります。
相手はすぐに手をひっこめてそれっきり降車していったのですが、今からふりかえると私の行為は適切ではなかったと思います。
当時の私には相手に反撃する気の強さはあったかもしれませんが、大声を出して「この人、痴漢です」と訴える勇気はなかったからです。
女性にとって本当に必要な勇気は性犯罪者をきちんと告発することです。
痴漢を訴える時にボールペンを持っていたなら、相手の手にパッテンを書いてやるだけで十分です。
わざわざ傷を負わせて損害賠償を請求される(たとえ勝訴するにしても多大な時間と金銭と精神力のロスになります)ことはないでしょう。
物理的反撃が抑止力になるかというと、そうはいきません。
もともと腕っ節に自信のないタイプの性犯罪者は、自分が反撃にあわない状況を注意深く選んで犯行におよびます。女性の性的な魅力に我を忘れて衝動的に、というのは加害者側がでっちあげた神話です。
魅力的な女性よりも孤立した状況、抵抗できなさそうな女性が標的になります。
一般の女性でも反撃されそうだと感じた時、性犯罪者はどうしたって反撃できない標的を選びます。
障害者と子どもです。
成人女性がいくら強くなっても、性犯罪者をきちんと捕まえて訴えないかぎり、より弱い人間が犠牲になるだけです。
世の中に求められているのは、勇気をもって痴漢やレイプ犯を訴え出た女性を援護することです。
女性に対して「自ら反撃して身を守れ」と強要することではありません。
「正当防衛が認められているのだから、反撃しないのなよくない」などという考えはもってのほかだと思います。